活動報告

ラウンドテーブル「つくる・つかう・展示する」

ポリフォニックミュージアム、今年度のアウトプットが終了しました。
1月下旬からのアウトプットを少しずつ振り返ります。
1月末からは新型コロナウイルスの感染拡大の影響で
予定していた形から変更をしながらの開催ともなりました。
そのような中、臨機応変に対応してくださった講師の皆さん、
参加者の皆さんに、心より感謝申し上げます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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ラウンドテーブル (オンライン・クローズド) 
つくる・つかう・展示する
~斎藤清美術館「やないづの家宝展」から考える~
日時:令和4年2月6日(日)13時30分~15時30分
講  師:橋本誠さん(NPO法人アーツセンターあきたディレクター/LMN実行委員会委員)
    我妻泉香さん(柳津町地域おこし協力隊)
    谷野しずかさん(柳津町地域おこし協力隊)
    塚原有季さん(柳津町地域おこし協力隊)


柳津町にある斎藤清美術館では、2019年から「やないづの家宝展」を毎年開催しています。
同館に所属する地域おこし協力隊が、柳津町のみなさんに柳津について取材し、その中で出会った「家宝」のような大切なモノ・コトを地域おこし協力隊の視点でまとめ、表現したものです。
3年目となる「やないづの家宝展2021」開催にあわせ、全国のアートプロジェクトに精通するNPO法人アーツセンターあきたディレクターの橋本誠さんを講師にお迎えして、類似する視点の事例についてもお聞きしながら、地域に残るモノ・コトからわかる「つくること」「つかうこと」の意味と、「展示する」というミュージアムならではの手法について考えました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


当日は、一面の雪景色に降り続く雪が重なり、雪国・会津独特の、大地も空も全て白い世界に包まれながらのラウンドテーブルに。
会場としてご協力いただいた斎藤清美術館のガラス面の大きなホールからは、斎藤清さんも描いた赤いアーチ橋とその奥に佇む柳津町の中心・圓蔵寺の見守るような姿も見えました。
ラウンドテーブルのスタートは、「やないづの家宝展2021」の展示会場から。テレビの中継のように展示主担当の我妻さんが、会場から展示を紹介してくれました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後は、ホールで我妻さん、谷野さん、塚原さんから
「やないづの家宝展」の開催の経緯、今年度の展示開催までの紆余曲折、展示から見えてきたことなどをご報告いただきました。


展示紹介と報告を受けて、橋本さんからは3人への質問も交えながら、アートプロジェクトとも言える「やないづの家宝展」へのコメント、秋田の事例紹介をいただきました。
残念ながら、橋本さんに現地で展示や議論にご参加いただくことはできませんでしたが、終始あたたかい雰囲気の中でのラウンドテーブルとなりました。


「やないづの家宝展」の協力者・柳津町の金子勝之さんからは、町民の目線で、美術館の意義や3人の活動について、地域の文化と継承についてなど、お話をいただきました。


また、本ラウンドテーブルのきっかけとなっている只見町でのアートワークショップ「つくること・つかうこと」を一緒に進めてくださっている只見町の中野さん、昨年度までLMN実行委員会委員としてご協力をくださった岩手大の福留先生もオンラインで議論に参加してくださいました。


つくること・つかうことの意義、大切さ。
それらを伝える展示という仕組み。
次に繋げたい議論となりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


当日の様子は、後日、福島県立博物館の公式YouTubeで公開する他、
記録集にも収載予定です。
公開となりましたら、ぜひご覧ください。


主催:ライフミュージアムネットワーク実行委員会
協力:斎藤清美術館

ラウンドテーブル「土地を知るには食から」

ポリフォニックミュージアム、今年度のアウトプットが終了しました。
1月下旬からのアウトプットを少しずつ振り返ります。
1月末からは新型コロナウイルスの感染拡大の影響で
予定していた形から変更をしながらの開催ともなりました。
そのような中、臨機応変に対応してくださった講師の皆さん、
参加者の皆さんに、心より感謝申し上げます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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ラウンドテーブル「土地を知るには食から」
講師:森枝卓士氏(写真家・ジャーナリスト・大正大学名誉教授)
   赤坂憲雄氏(民俗学者・学習院大学教授・元福島県立博物館長)
報告:塚本麻衣子(福島県立博物館学芸員・ライフミュージアムネットワーク実行委員会事務局)
     松尾悠亮氏(昭和村からむし工芸博物館学芸員)
日時:令和4年2月5日(土)13:30~16:00


本当は奥会津・昭和村の、すっぽりと雪に囲まれた、美しく温かみのある空間で、土地の食が暮らしに根ざして残る場所での開催を予定していたのですが、残念ながら完全オンラインでの開催。
講師のお二人も、報告の松尾さんも、参加者の皆さんも全員オンラインで時間を共有しました。


最初は、福島県内の浜通り・中通り・会津の食に関する報告から。
LMN事務局の塚本さんは、今年度ポリフォニックミュージアムで行ってきたアートワークショップの一つ「海幸山幸の道」の食のリサーチについて報告を行いました。リサーチしてきたのは、浜通りのいわき市と中通りの飯舘村。飯舘村から南東に走る阿武隈ロマンチック街道の先にあるいわき市。両地とも今も「食」という暮らしに直結したテーマに震災・原発事故の影響が残っています。そして両地とも、自然からの恵みを大切に、自然に近しい距離感で、農産物・海産物を育て加工している方達がいました。人の身体はその土地の食でできていること、共に食べることの意味を教えてくれるリサーチだったことを報告しました。


奥会津・昭和村のからむし工芸博物館学芸員の松尾さんからは、近年行った昭和村の婚礼料理の再現とそこに至るまでのリサーチのこと。そして再現から見えてきたことについて報告をいただきました。再現で見えてきたのは、今はあまり目にしなくなった婚礼料理、食材を用いた知恵、祝いのセンス。新たな昭和村の看板料理誕生!?の可能性も見えた報告でした。


続いて、写真家・ジャーナリストの森枝卓士さんからは、生まれ育った水俣で高校生時代にフォトジャーナリストのユージン・スミスに出会ったこと。その後、ご自身もフォトジャーナリストとなりカンボジアなどで取材を続ける中、戦争中の人々の食の場面に遭遇し、土地を知るには食を知ることだと考えるようになったこと。その後、世界各地の食を調査し、その土地の市場や台所から見える文化を追いかけていること。同じ料理を比較することで文化の伝播も見えてくること。火を使い、調理を行うことで、食べられる範囲を広くしてきた人間のこと。共食の意味。スマホの発達で誰もが食の記録者になれることなどについて、ご講演いただきました。


最後、森枝さんと赤坂憲雄さんの対談では、水俣と福島の類似点と相違点、都市へのエネルギー供給地としての立地、食と風評被害のことなどについての対話をスタートに、地域の食をいかに掘り起こし、展開していくのかなどについてお話が広がりました。松尾さんから報告された婚礼料理の再現を基盤に、奥会津で昭和村で食をテーマに文化を見直し、地域の皆さんと共有し外に伝える可能性も広がりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


オンライン参加の皆さんからチャットを使って頂いたご感想・ご意見も共有して、ラウンドテーブルは終了。
当日の動画は、後日、福島県立博物館の公式YouTubeで公開の予定です。また記録集にも収載いたします。
どうぞお楽しみにお待ちください。

アートワークショップ「博物館部」レポート⑲

アートワークショップ「博物館部」実施に向けてのあれやこれやを、テキストとイラストでお届けします。
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2021.12.13
~支援学校と博物館をアーティストと行ったり来たり~
今日は中津川さんとワークショップの日です。支援学校の実習室をお借りします。床に養生をして、水彩絵の具といくつかの大きさの紙を準備しました。人が寝転がれそうな大きな紙もあります。サイズの違う紙を持って生徒さんの目の前に持って行ったり、絵の具を並べたパレットを差し出して「どの色を使おうか?」と声をかけたりします。こうした立ち居振る舞いは、中津川さんの「まわりからこれをした方がいいというのを与えるのではなくて、生徒さんが自分から選ぶのを待ってあげることが大切。」という想いが詰まっています。
(テキスト・イラスト 江畑芳)

アートワークショップ「博物館部」レポート⑱

アートワークショップ「博物館部」実施に向けてのあれやこれやを、テキストとイラストでお届けします。
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2021.12.10
~支援学校と博物館をアーティストと行ったり来たり~
中津川さんと博物館を見学します。今日も、自分の見たいところをどんなふうに見てもいいのです。一回目も来てくれた生徒さんたちは、前回楽しんでくれたところへ一直線に向かっていました。見学が終わってから一呼吸して、A4サイズの画用紙にクレヨンでドローイングをしました。中津川さんも、一緒に見学した学芸員さんも、生徒さんたちの一挙手一投足を見守ります。生徒さんが自分から手を動かしてくれるように、ゆっくりと時間を過ごしました。
(テキスト・イラスト 江畑芳)

アートワークショップ「博物館部」レポート⑰

アートワークショップ「博物館部」実施に向けてのあれやこれやを、テキストとイラストでお届けします。
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2021.12.8
今日はとある教室のみなさんが博物館に来てくれました。街並みの模型の中にいる小さな犬や、竪穴式住居の中に吊るされたウサギ、土器のモチーフとなった鳥。博物館には様々な動物たちがいます。今日はそんな動物たちを探してもらいます。見つけた動物はインスタントカメラで撮影して記録します。新しい視点で探検すプログラム、終わった後の反省会ではこの結果をマップにまとめ、博物館に来た人に使ってもらえるようにしましょうということになりました。児童・生徒のみなさんにとっては自分たちの視点を誰かに楽しんでもらえる体験となり、博物館にとっては生徒さんたちの新鮮な視点を得る機会となりました。
(テキスト・イラスト 江畑芳)

アートワークショップ「博物館部」レポート⑯

アートワークショップ「博物館部」実施に向けてのあれやこれやを、テキストとイラストでお届けします。
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2021.12.6
~支援学校と博物館をアーティストと行ったり来たり~
今日の会場は支援学校で生徒さんたちが日頃授業を受けている“いつもの”教室です。佐野さんと大江さんによるワークショプを行います。博物館を見学したときの映像を見てのふり返りでは、集中して見てくれている様子でした。ここから、佐野さんの進行で自分だけの「博物館box」を作ります。ベースの箱は大江さんが準備してきてくださいました。案内板の光る文字を再現したり、好きな素材を貼ったり、中に貝殻を入れて音が出るようにしたりしました。授業が終わった後、完成したものを手に取って嬉しそうに眺めてくれました。
(テキスト・イラスト 江畑芳)

ラウンドテーブル「ヤベアベ学級との12月」

ポリフォニックミュージアム、今年度のアウトプットが終了しました。
1月下旬からのアウトプットを少しずつ振り返ります。
1月末からは新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、予定していた形から変更をしながらの開催ともなりました。
そのような中、臨機応変に対応してくださった講師の皆さん、参加者の皆さんに、心より感謝申し上げます。
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ラウンドテーブル「ヤベアベ学級との12月
~支援学校と博物館をアーティストと行ったり来たりした3週間~」
(オンライン・クローズド)
日時:令和4年2月3日(木)15時30分~17時00分
参加者:佐野美里さん(彫刻家)*テキスト参加
    大江ようさん(TEXT主催)
    中津川浩章さん(アーティスト)
   森内康博さん(映像作家)
    加藤香洋さん(福島県立会津支援学校校長)
    杉本雅昭さん(福島県立会津支援学校副校長)
    矢部翔太郎さん、阿部美由紀さん(福島県立会津支援学校教諭)
    岡部兼芳さん(はじまりの美術館長/LMN実行委員会委員)
    鈴木晶(福島県立博物館長/LMN実行委員会委員長)
*レポート担当アーティスト江畑芳さん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今年度実践した4つのアートワークショップのひとつ「博物館部」は、様々な方にミュージアムを楽しんでいただけるようになるためにの取り組みです。
その一環で、12月に福島県立博物館を訪れてくれた福島県立会津支援学校高等部2年4組の3人は、博物館と支援学校を3人のアーティストと行ったり来たりしながら、博物館で過ごし、支援学校で創造を楽しんでくれました。講師として3人と一緒に過ごした佐野さん、大江さん、中津川さん。中津川さんには、博物館と支援学校を行き来するという特異な条件を活かしたワークショップの枠組みを作っていただきました。そして、行ったり来たりの3週間を記録し、そこから見える大切なことを伝える映像作品を作ってくださった森内康博さん。
関係する皆さんと、会津支援学校の加藤校長先生、杉本副校長先生、高等部2年4組の担任の矢部先生、阿部先生。そして本事業に適切なアドバイスと共に伴走してくださったLMN実行委員会委員ではじまりの美術館長の岡部さん。
皆さんにご一緒いただき、事業を振り返るラウンドテーブルをクローズドで開催しました。


スタートは、森内さん制作の映像作品の初お披露目。丁寧に大事なことを捉える視線で3週間を追いかけた森内さんは、大切な気づきをたくさんくれる映像作品を作り出してくれました。
映像に多くの糸口をもらって、ディスカッションがはじまりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3人が博物館で気持ちよく楽しめるように気を配り、時に心配しながら、予定調和のない3人の行動に良い意味で振り回された大人たち。
学校以外の大人と生徒たちが出会える場を大切にした支援学校の先生方の思い。外部との接続を積極的に図ろうとする学校の柔軟な解放性。
生徒が博物館の様々な要素(展示のスチールの台の穴やガラスケースのスベスベ!)を気に入り、展示品ではないモノに価値を見出す3人を新鮮な驚きとともに受け入れた博物館。
アーティストが関わることで生徒たちの創造性が引き出され、新たな表現が生まれたこと。
家でも学校でもない場所で、多くの人が障がいに出会い、知る場となれるミュージアムの可能性。
当初は、福島県立博物館に集まって行う予定だったラウンドテーブル。全員オンラインとなり、画面越しでの意見交換となりましたが、引き続き今回のような場を設けることへの応援をみなさんからいただいた、とても嬉しい時間になりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

LMN実行委員会委員長の福島県立博物館鈴木館長をはじめ、事業を担当したLMN実行委員会事務局の川延副館長、小林、江川学芸員は、中津川さんのワークショップで3人が描いた作品を飾らせていただいた博物館のレストランから出演しました。
森内康博さんの映像作品、ラウンドテーブルの動画は、後日、福島県立博物館の公式YouTubeで公開の予定です。
公開となりましたらぜひご覧ください。

ラウンドテーブル「開く、ミュージアム」

ポリフォニックミュージアム、今年度のアウトプットが終了しました。
1月下旬からのアウトプットを少しずつ振り返ります。
1月末からは新型コロナウイルスの感染拡大の影響で
予定していた形から変更をしながらの開催ともなりました。
そのような中、臨機応変に対応してくださった講師の皆さん、
参加者の皆さんに、心より感謝申し上げます。
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ラウンドテーブル「開く、ミュージアム」
日時:1月23日(日)13:30〜16:00
講師:柳沢秀行氏(大原美術館学芸統括)
   楠本智郎氏(つなぎ美術館主幹・学芸員)
   岡村幸宣氏(原爆の図丸木美術館学芸員)
ディスカッションモデレーター:川延安直(福島県立博物館副館長)
会場:福島県立博物館 講堂


大原美術館の柳沢さんからは、コロナの状況下の厳しい美術館運営、その中で改めて気づいた様々な「ステークホルダー」との関わり、様々な地域資源の結節点、露出点としての美術館の存在意義について、これまで実施してこられた様々な取り組みのご紹介とともに、お話しいただきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つなぎ美術館の楠本さんからは、水俣病からの地域の再生と魅力的な文化的空間の創造を目的に開館したつなぎ美術館の、地域と創り上げてきた、地域の魅力を見つけるいくつかのユニークなプロジェクトについて教えていただきました。行政との連携も大事なキーワードでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

丸木美術館の岡村さんからは、丸木位里・丸木俊夫妻が描いた「原爆の図」のための美術館という美術館の特性から、多くの方の支援により運営されてきたあり方とその現在の課題と、2011年以降東日本大震災と原発事故に向き合う場としての意味を持つようになった美術館のこれからの役割ついて、お話しいただきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後半行ったディスカッション「開く、ミュージアム」では、3人の方とモデレーターを務めた川延福島県立副館長がミュージアムを「開き続ける」こと、の難しさと大切さについて語り合いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


まだまだ議論を聞きたいぐらいだったラウンドテーブル。
オンラインと来場、それぞれの方法でご参加くださった皆様、ありがとうございました。
このようなテーマで、また皆さんと考える場を作っていきたいと思います。
本ラウンドテーブルの内容は、記録集に掲載するほか、当日の録画データを福島県立博物館の公式YouTubeで公開の予定です。
もう一度改めて見たかったという方も、気になっていたけど参加できなかったという方もぜひご覧いただければと思います。
お忙しい中、ご登壇くださった3人の講師の皆さん、ご参加の皆さん、本当にありがとうございました。
議論を次に繋げたいと思います。

アートワークショップ「白河まち歩きスゴロクを作ろう!」レポート⑥

2021年12月5日に行われたアートワークショップ「白河まち歩きスゴロクを作ろう!」。
当日参加したアーティストの藤城光さんにレポートしていただきました。
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「白河」という街から受け取ったものを、写真を使って表現していく過程からは、自分の嗜好を通して地域そのものが発する語りを感じる力が、それぞれの内側から顔を出してくるのを見るようでもあった。10年後には残らないかもしれない景観や表面には見えない記憶が、歩きや写真、語りを通して個人の中に蓄積されてゆく。個々の価値のありようが可視化され、共有され、互いの視点の交換を通して多くに触れることができる仕組み。それは、その地域にある重層的かつ多様な価値の集合知のようにも見えてくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてそれは、何に価値を見出すのかの根っこは、個人個人でしかないという、基本にも立ち帰らせてくれると同時に、3枚に絞り込む瞬間、道順を作った瞬間など、個人の視野からグループへの関わりへと変化するにつれての取捨選択は、個から公へと変化していく過程のようでもあり興味深かった。


実際に体や手を動かし、自分と他者を介在させながら感覚開拓が為されていく点、また、地域を知る楽しさを体感しながらも、気がつけば主体的に地域への眼差しが変化していく点も、このまち歩きスゴロクの醍醐味だろう。例えばまちに残る懐古的なものから過去を大事にする地域性の話が出てくるように、開かれる場所と一緒に作るメンバーによっても、開拓される感覚は変わるはずだ。いろんな地域・場所・人でまち歩きスゴロクを作ってみたらどんなものが浮かび上がってくるだろうか。自分の感覚を通して地域に潜む重層性に触れ、集った異なる視座からさらに多面的に物事を捉えていく経験は、参加者はもちろんのこと、地域自体にも思いもよらないさまざまな価値を付加してゆき、人も地域もより豊かで幸せなものにしていくのではないかと、参加者の皆さんの満足そうな表情をみながら思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(テキスト 藤城光)

アートワークショップ「白河まち歩きスゴロクを作ろう!」レポート⑤

2021年12月5日に行われたアートワークショップ「白河まち歩きスゴロクを作ろう!」。
当日参加したアーティストの藤城光さんにレポートしていただきました。
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さて、全員の写真のプリントが終わり、机には空欄のスゴロクのシートが置かれ、それぞれが選んだ3枚の写真が渡される。写真は自分以外には見せては行けないルールだ。話す順番を決め、1枚ずつ、選んだ理由を話しながら、写真を置いてゆく。全部が出揃ったところで、もう一度マップで確認しながら歩くルートの道順に合わせて写真を並べ替え、スゴロクのマスに配置する。道順が決定したら糊で写真を貼り付け、写真の横にコメントを入れ、スゴロクの空欄のコマにオリジナルのゲーム性を加え、タイトルを付けたら完成だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じような体験をしているように見えて、出来上がったスゴロクは、チームによってコメントの書き方も拾い上げられた内容も、全く違っていた。スゴロクを始める前に、ぐーちーむ、ぱーちーむで交換。別のチームが見ていた世界が目の前に開かれ、また違うアプローチで作られた視点に目を丸くする参加者たち。そしてサイコロを振りながら、この日のクライマックスであるスゴロクがスタートした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お地蔵さん、お城、自動販売機、何の電話番号かもわからない電話番号。祈祷師。謎の神社&鳥居。謎のミニ博物館。変わらないお菓子屋のおばあちゃんの妖怪疑惑。謎の穴。たくさんのミステリーが展開し、あがりを競うスゴロクのゲーム性にだんだんみんな前のめりとなっていった。“振り出しに戻る”が仕込まれたスゴロクのチームでは「ここまできて〜!?」「うわ〜!!」と奇声が上がり、最初のあがりは、ゴールに進むコマからのジャンプ。「そんなあがりかたある〜?」と笑う陸奥さん。「振り出しに戻るが強烈すぎて内容思い出せない」という感想が出るほど、学生も大人も夢中になってゲームを楽しんでいた。
(テキスト 藤城光)