ラウンドテーブル「土地を知るには食から」

ポリフォニックミュージアム、今年度のアウトプットが終了しました。
1月下旬からのアウトプットを少しずつ振り返ります。
1月末からは新型コロナウイルスの感染拡大の影響で
予定していた形から変更をしながらの開催ともなりました。
そのような中、臨機応変に対応してくださった講師の皆さん、
参加者の皆さんに、心より感謝申し上げます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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ラウンドテーブル「土地を知るには食から」
講師:森枝卓士氏(写真家・ジャーナリスト・大正大学名誉教授)
   赤坂憲雄氏(民俗学者・学習院大学教授・元福島県立博物館長)
報告:塚本麻衣子(福島県立博物館学芸員・ライフミュージアムネットワーク実行委員会事務局)
     松尾悠亮氏(昭和村からむし工芸博物館学芸員)
日時:令和4年2月5日(土)13:30~16:00


本当は奥会津・昭和村の、すっぽりと雪に囲まれた、美しく温かみのある空間で、土地の食が暮らしに根ざして残る場所での開催を予定していたのですが、残念ながら完全オンラインでの開催。
講師のお二人も、報告の松尾さんも、参加者の皆さんも全員オンラインで時間を共有しました。


最初は、福島県内の浜通り・中通り・会津の食に関する報告から。
LMN事務局の塚本さんは、今年度ポリフォニックミュージアムで行ってきたアートワークショップの一つ「海幸山幸の道」の食のリサーチについて報告を行いました。リサーチしてきたのは、浜通りのいわき市と中通りの飯舘村。飯舘村から南東に走る阿武隈ロマンチック街道の先にあるいわき市。両地とも今も「食」という暮らしに直結したテーマに震災・原発事故の影響が残っています。そして両地とも、自然からの恵みを大切に、自然に近しい距離感で、農産物・海産物を育て加工している方達がいました。人の身体はその土地の食でできていること、共に食べることの意味を教えてくれるリサーチだったことを報告しました。


奥会津・昭和村のからむし工芸博物館学芸員の松尾さんからは、近年行った昭和村の婚礼料理の再現とそこに至るまでのリサーチのこと。そして再現から見えてきたことについて報告をいただきました。再現で見えてきたのは、今はあまり目にしなくなった婚礼料理、食材を用いた知恵、祝いのセンス。新たな昭和村の看板料理誕生!?の可能性も見えた報告でした。


続いて、写真家・ジャーナリストの森枝卓士さんからは、生まれ育った水俣で高校生時代にフォトジャーナリストのユージン・スミスに出会ったこと。その後、ご自身もフォトジャーナリストとなりカンボジアなどで取材を続ける中、戦争中の人々の食の場面に遭遇し、土地を知るには食を知ることだと考えるようになったこと。その後、世界各地の食を調査し、その土地の市場や台所から見える文化を追いかけていること。同じ料理を比較することで文化の伝播も見えてくること。火を使い、調理を行うことで、食べられる範囲を広くしてきた人間のこと。共食の意味。スマホの発達で誰もが食の記録者になれることなどについて、ご講演いただきました。


最後、森枝さんと赤坂憲雄さんの対談では、水俣と福島の類似点と相違点、都市へのエネルギー供給地としての立地、食と風評被害のことなどについての対話をスタートに、地域の食をいかに掘り起こし、展開していくのかなどについてお話が広がりました。松尾さんから報告された婚礼料理の再現を基盤に、奥会津で昭和村で食をテーマに文化を見直し、地域の皆さんと共有し外に伝える可能性も広がりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


オンライン参加の皆さんからチャットを使って頂いたご感想・ご意見も共有して、ラウンドテーブルは終了。
当日の動画は、後日、福島県立博物館の公式YouTubeで公開の予定です。また記録集にも収載いたします。
どうぞお楽しみにお待ちください。