アートワークショップ「つかうこと・つくること」秋田リサーチ

11月5日~7日、LMN実行委員会委員でNPO法人アーツセンターあきたディレクターの橋本誠さんのご案内で、秋田市文化創造館をはじめとする秋田市内・近郊の取り組みをリサーチしてきました。

11月5日
まず始めにご案内いただいたのは、秋田市の旧金足小学校に展示されている油谷コレクション。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

油谷滿夫さんが収集された50万点の資料のうち約20万点、民具、暮らしの道具、商家・酒屋の道具類、小学校の教材、楽器、レコードから雑誌にいたるまで・・・が展示されています。
あまりの物量と情報量にめまいがするほどの一大コレクション。
油谷さんは個人のコレクターとして収集活動を行い、もともとは湯沢市に収集品を保管していましたが、近年秋田市に寄贈し、展示・保管と分類整理を続けておられます。
コレクションがあまりに膨大なこともあり、維持管理は難しい状況だそうですが、
秋田公立美術大学のギャラリーで開催された「アウト・オブ・民藝|秋田雪橇編 タウトと勝平」(2020年)、秋田文化創造館の「200年をたがやす」展(2021年)で紹介されたことをきっかけに、これまでとは異なる視点・手法での民具の展示に手応えも感じておられるとお聞きしました。
現在も、秋田文化創造館での「木の岐(キノマタ)」(藁などを打つ道具)の展示を準備されているとのこと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

近年UターンやIターンした若手が何やら面白い活動をしているという五城目町へ。
五城目町では、地元の酒蔵・福禄寿酒造を紹介する「333、」展が開催されていました。
福禄寿酒造は今年で創業333年を迎えます。その物語を伝える展示やトークイベントが、町内の酒屋、ギャラリー、カフェ、本屋さんなどで行われています。
会場のひとつ、ギャラリー「ものかたり」の小熊隆博さんにお話をお聞きしました。
五城目町は500年続く朝市や江戸時代創業の酒蔵など古い歴史をもつ町ですが、若手が移住し新しいことを始めてもいます。古い、新しい、どちらがよいというのではなく、どちらもそのまま共存し、強い連携があるわけでもなくそれぞれにもぞもぞ何か始めている。そんな不思議な空気感を教えていただきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

11月6日
2021年にオープンした秋田市文化創造館へ。
秋田市文化創造館の建物は、もとの秋田県立美術館。特徴的な三角屋根と丸窓が目印です。美術館が近隣に移転したことに伴い、市民の愛着がある建物を活かして、新しく文化創造館としてスタートしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

「出会い、つくり、はじめる場」をコンセプトに、誰にでもひらかれ、創造力を養う出会いの場、何かを始めようとする人を応援する場として、まちなかでやりたいことを公募・応援する「SPACE LABO」「秋田市文化創造館パートナーズ」やクリエイター・イン・レジデンス、こどもたちのやりたい!を全力で見守る「NEOびじゅつじゅんびしつ」など、数々の特徴的な事業を展開しています。
1階はあくまでフラット。ショップやカフェ、ワークショップスペース、展示スペース、ブランコ(!)などがあり、のんびりする人、会話する人、勉強する人などが思い思いに時を過ごしていました。館のスタッフがゲリラ的に珈琲店を開店したり、利用者の方がホットワインをふるまったりと、人の思いに応じて可動する空間となっているようです。

 

 

 

 

 

 

 

 

貸しギャラリー的機能もありますが、利用したい人・団体の希望に応じて、何をどこまで一緒にやるか、その場合場合に応じて対応しているとのこと。「ガイドラインを作らなければと思っているんですけど」と橋本さんはおっしゃいますが、ガイドラインがないことがこの融通無碍な雰囲気を生んでいる秘訣では?と感じました。


11月7日
秋田市文化創造館のクリエイター・イン・レジデンス事業「.oO」のワークショップ「SUNDAY DONUTS」『時間を捉えてみる』に参加しました。
「.oO」は松田朕佳さんと雨宮澪さんによる、20年後の秋田に煙の輪っかを浮かべる計画。
「20年後」という時間を捉えるため、「未来とは?」「時間は生き物?」「時間は無限?有限?」「時間に感情はある?」といった問いについて参加者が対話を重ねました。
久しぶりの抽象思考。とても刺激的な時間でした。
この事業の主体は「CHIKA, MIWO, &MORE」と名付けられていますが、その「&MORE」は私たち。参加した人々が様々に語り合い、練られた思考によって20年後の輪っかをつくります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後半は「NEOびじゅつじゅんびしつ」の発表会に同席させてもらいました。
こどもたちの「夢」を募集し、それを実現するプロジェクトです。今回の「夢」は「しぜんのものを使いサバイバル生活をしたい」と「みんなでデザインしたお皿で料理を出すレストランの店員になりたい」。
二つのチームがそれぞれに試行錯誤する様を、大人は口出しせずひたすら見守ります。時にはバスを間違えて全然違う場所に行ってしまったりしますが、それでもじっと見守る。
何かあったら大変と先回りしがちな中で、手出しをしないというのは、おとなにとってとても覚悟がいることかもしれません。こどもの「夢」を実現すると同時に、おとなの考え方を揺さぶるプロジェクトなのではないでしょうか。


誰にでもひらかれた場所。
言うは易く、行うは難しい。
それを実現しようとしている取り組みに、多くの刺激を受けた秋田リサーチでした。