アートワークショップ「つくること・つかうこと」奥会津リサーチ

アートワークショップ「つくること・つかうこと」は、
奥会津の只見を中心に、自然とともにあるくらしの中で、つくり、つかってきたことに学びながら、人と人とが交わり、新たなくらしを紡いでいくことをめざすワークショップです。


11月30日、12月1日、実行委員会委員の橋本誠さん(アーツセンターあきたディレクター)と奥会津をめぐり、民具を用いた場づくり・コミュニケーションづくりの可能性について、奥会津のミュージアムや収蔵施設の連携について、リサーチを行いました。


11月30日
三島町生活工芸館は、生活のなかのものづくりを大切にしています。
奥会津では冬のあいだ、山ブドウやマタタビ、ヒロロを用いた編み組のザルやカゴをつくりついできました。三島町では、電源開発の歴史への反省から、「足下の泉を掘れ」をキーワードに生活工芸運動を展開し、ものづくり文化を徹底的に見直してきました。ものづくりを継承するアカデミー生が、おじいさんたちのもとで技術の研鑽に励んでいます。
金山町自然教育村会館(旧玉梨小学校)には、栗城弥平さんが収集した「弥平民具」が収蔵されています。普段は公開しておらず、「活用」が課題になっています。
金山町では、町に残る古い写真をもとに町の歴史や文化を捉え直す「かねやま「村の肖像」プロジェクト」が行われています。また、角田勝之助さんが昭和20~30年代ころに民具の使い方などを再現撮影した写真などもあり、金山町は「写真」が特徴です。
LMNでは昨年、写真と民具を組み合わせた金山民具キットを考えました。
昭和村ではからむし工芸博物館と観光・交流施設喰丸小を訪ねました。昭和村はからむしの生産を村の産業としてきました。からむしの歴史、使われてたきた道具類などについて、からむし工芸博物館の学芸員・松尾悠亮さんにお聞きしました。
喰丸小は映画のロケにも使われた趣のある建物。建物の一部で、地域おこし協力隊の方が分類・整理を行ってきた民具を展示しています。
昭和村でも昨年、暮らしのさまざまな場面をテーマに民具キットをつくりました。
橋本さんとともに奥会津各町村でのさまざまな取り組みを振り返り、アートワークショップ「つくること・つかうこと」の展開を考えます。


12月1日
二日目は只見町へ。
実行委員会委員の中野陽介さん(只見町ブナセンター主任指導員)と合流し、只見町をご案内いただきました。
只見町の特徴は、豪雪が生んだ特徴的で豊かな自然と、その中で育まれた人のくらし・文化がユネスコエコパークに認定されていることです。
まずは、ただみ・ブナと川のミュージアムに伺い、只見の自然環境と動物、人のくらしについて、学芸員の吉岡義雄さんからご説明いただきました(ご自身の専門である昆虫について語り出すと止まらなくなる姿に、同じ学芸員としてとても共感しました)。関東のご出身の吉岡さんに、外から来た者の目で見た只見の魅力は何ですか?と質問すると、「生態系のピラミッドがしっかりと機能している。そんな貴重な生物の世界の中に、人の住むところがあること」とのこと。大切な視点だと思いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

只見では、資料館にあるような民具がごく当然に普段の生活の中で現役で使われていることに驚くと、中野さんは言います。
実際、昼食をいただいた農家民宿では、お父さんが年季の入ったマタタビのザルを使って豆の殻をむいていました。お父さんは、「昔は味噌、醤油、納豆、豆腐、なんでもつくった。つくらないと生活できないからつくった。だから豆は大切」と一粒一粒むいていました。「つくること・つかうこと」の原点があるような気がしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

また、中野さんいわく、かんじきなどの一部に化学繊維のロープが使われていることが多々あると言います。現役で使われているからこそ現在の素材でつくられている。「民具」とはこういうもの(こうあってほしい)という先入観に軽くパンチをいれる一撃です。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、来年7月オープン予定のただみ・モノとくらしのミュージアムへ。
国指定重要文化財に指定されている「会津只見の生産用具と仕事着コレクション」を収蔵し、それらを展示公開する施設として準備が進められています。体験コーナーも設ける予定とのこと。昨年リサーチさせていただいた島根県の熊谷家住宅のように、地元のこどもたちの学びの場になっていくのでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

最後は、山村の暮らし宿泊体験施設「森林の分校ふざわ」を訪ね、代表の藤沼航平さんにお話をお聞きしました。
布沢地区は只見でもかなり奥まった地域であり、人口は110人ほど。それゆえの危機感からか、何かしようという思いが強く、外部の人を積極的に受け入れる気風がある地区だといいます。山歩きや農業体験など、地区の特技を持っている人がガイドをつとめます。また、こどもたちが地区の方にヒントをもらいながら目的地にたどりつく探検ツアーも行っているとのこと。例えば、使い方のわからない民具を持って、地区の方に教えてもらいに行くツアーなど、たくさんのヒントをいただきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

民具とはなんでしょう。
資料館にあるような「民具」をイメージし、それに過剰な理想を上乗せしてしまいがちですが、民俗学的には現在使われているものも民具と言うそうです。
化学繊維が使われた民具に価値観を揺さぶられたように、民具とはもっと振れ幅のあるものなのかもしれません。そして、そこに人が関わる関わり代ももっと可能性があるのかもしれません。
そこを掘り下げていきたいと思います。