アートワークショップ「海幸山幸の道」リサーチ・撮影(飯舘・浪江)

「海幸山幸の道」では、阿武隈山系から沿岸地域に至る食の記憶と現在についてインタビューを行い、その土地の風景とともに伝える映像作品を制作します。


8月22日~23日、前回リサーチさせていただいた飯舘村を、映像作家の飯田将茂さんと再び訪れました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


22日
認定NPO法人ふくしま再生の会の田尾さんにご案内いただき、帰還困難区域となっている長泥地区へ。
そこでは5000ベクレル以下の除染土を埋め、山砂を積み、「再生」が行われています。
「再生」とは何か。
動植物や地中の細菌が織りなす営みによって土がつくられ、その土を耕し、土の恵をいただいて、人と自然が共生する社会を生み出すことではないのか。
解決策や解答がなくても、現場から考えること、考える場をつくること、みなが考える席につきそこから始めること。
長泥地区の風景の中で語られる田尾さんの言葉を記録しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ホームセンター・コメリ跡地で、合同会社MARBLINGの矢野純さんにお話をお聞きしました。
MARBLINGの考える「未来のいなか」は、決して都会の人が求める「理想の田舎」ではない。「スローライフ」なんてとんでもない。人間にはままならない自然を相手に、始終働き続け、その結果が実らないことも受け入れる生き方。そこには驚くほどの知恵と技とアートがある。この場にじっくり身をおいてこそわかることがあることを知る仕組みを考えていきたいとお話しいただきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

23日
まず斎藤次男さんの畑を撮影。前回伺った時に青々としていた葉は枯れていましたが、カボチャや瓢箪はいよいよ大きく実っていました。
斎藤さんが考える土づくりについて、ぜひ次回お伺いしたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次に牛牧場を営む、山田猛史さん・豊さん親子を訪ねました。山田さんは大規模牛舎、田んぼ跡地の放牧地、丘を切り開き運動場を備えた牧場と、3種類の形態で牛を育てています。
今回は丘の牧場を訪ねました。牛たちのどこか伸びやかな表情が印象的でした。
帰還後の状況に応じてそれぞれ営まれてきた形態やマーケティングについて教えていただきました。
飯田さんが注目したのは猛史さんの頑健な体つき。牛と付き合ってきた暮らしが猛史さんの体をつくりあげています。現場に根差して生きることの意味を何よりも雄弁に物語っているようでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後半はミズアオイの群生地を求めて浪江町へ。
ミズアオイは古代から日本に自生する水辺を好む花。田んぼの開発や除草剤の使用によって絶滅危惧種になっていましたが、福島では東日本大震災による津波のあと、地中に眠っていた種が目を覚まし、各地で群生するようになりました。復興が進む中で次第に姿を消しつつありましたが、最近、除染土を入れたフレコンバッグが置かれていた浪江町の田んぼ跡地に群生していることが報告されました。
ミズアオイは、私たちの食生活を支える水田開発、震災と津波、復興への取り組みと刻々状況が変化する中、人と自然との関係性を象徴するかのような花です。
実際に訪れたミズアオイの群生地は、想像をこえて広がっていました。どうしてこのように広範囲に群生しているのか、その理由はまだわかりません。
ただ圧倒的に美しく、そこに咲いていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「海幸山幸の道」ではリサーチと撮影を重ねていきます。