NEW 連続オープンディスカッション「奥会津の周り方」第4回「民具整理から見えてくる奥会津のくらし」

11月14日(土)、銀杏が美しい昭和村の喰丸小学校で、
連続オープンディスカッション「奥会津の周り方」第4回「民具整理から見えてくる奥会津のくらし」を開催しました。

奥会津各町村ではくらしの道具「民具」が収集され、それぞれに活用の仕方を模索しています。
そのヒントを探すべくディスカッションが行われました。


福島県立博物館学芸員の山口拡さんからは、全国的に民具コレクションが散逸・廃棄の可能性にさらされている現状が紹介されました。地域の文化を観光に活かすことが求められていますが、地域の文化を知ることは誰のためなのか、そこに博物館が果たす役割は何なのか。それを探るためにも、体験で語ることができるコミュニケーションツールとして民具を見直すことが提言されました。また、今年度LMNで試行している奥会津各町村の特徴を備えた民具キットつくりについてもご紹介いただきました。


昭和村からむし工芸博物館学芸員の松尾悠亮さんからは、昭和村における民具活用の事例をご報告いただきました。からむし工芸博物館では、昭和村で作られるからむしを伝えるため布づくり実演や地機講習会を行っています。博物館で展示されている糸づくり・布づくりの道具が今も現役で使われていることを来場者に見ていただくことで、来場者と昭和村の人々との交流の場となっているそうです。また地機講習会は楽しいお茶の時間も設け、そこで交わされる会話から、松尾さん自身、様々なことを教えてもらう場になっているそう。民具や手わざが「場」となる実例をご紹介いただきました。


NPO法人20世紀アーカイブ仙台副理事長の佐藤正実さんからは、仙台で行っている写真や映像のアーカイブ活動についてご紹介いただきました。資料としてミュージアムに収蔵されている写真・映像が、佐藤さんたちNPO法人と連携することで生きた素材となること。アーカイブとは過去と現在との経験の同期であり、未来へのプレゼンであること。たった一枚の写真から引き出される記憶の豊かさ、そこにそれを知らない世代が関わることで生み出される双方の驚き。アーカイブとはそれ自体が目的なのではなく、そこから発生する他地域・多世代間の交流こそが大切であること、またその交流を生むための仕組みつくりが肝要であることを教えていただきました。


後半の全体でのディスカッションでは、民具・映像と素材は異なりますが、ともに語りが生み出される「場」となりうることが語られました。「これ何だろう?」から対話が生まれ、わかってくるプロセス、結局わからないプロセスともにとても創造的であること。答えが出ないからこそ語り続けられるという仕組みの面白さ。


「モノ」ももちろん大切ですが、「モノ」が生み出す「場」の可能性について対話することができた第4回でした。