活動報告
アートワークショップ海幸山幸の道 いわきリサーチ二日目
10月27日・28日の二日間、LMN実行委員会委員の静岡大学教授・平野雅彦さん、本ワークショップの調査撮影を依頼している映像作家の飯田将茂さんと、いわき市の沿岸部・山間部を訪ねました。
10月28日(二日目)のレポートです。
久保木さんより船がぶじに海に出たとの知らせを受け、小名浜港に向かいました。
久保木さんと娘さんが待つ港に、漁を終えた昭政丸が戻ってきます。
昭政丸には、久保木さんのご主人、息子さん、お孫さんが乗っており、見事な連携で船倉から魚を運び、港のトラックに積み込みます。
今日は不漁だと言いながら、どこか晴れやかな表情のみなさん。漁に出られたことが何より嬉しそうです。今日はだめでも明日はいいかもしれない、一日一日海からもらったもので生きていく。そんな明るさと喜びを感じました。
とはいえ、見事なヒラメが数十尾。活魚のまま、セリが行われる沼ノ内漁港にトラックで直送します。
沼ノ内漁港では、久保木さん・娘さんに、息子さんのお嫁さんも加わり、種類や大きさごとに魚を並べていきます。かなりの重労働と思われますが、久保木家の女性たちの身のこなしは鮮やかで気持ちがいいほどでした。
後継者不足により親子三代で船に乗っているのは周辺でも珍しいのだとお聞きしました。漁に出るご主人、息子さん、お孫さんだけでなく、港で働く久保木さん、娘さん、お嫁さんも含め、船はまさに家族を乗せる家なのだと思います。
次は、今回のリサーチにあたって地元の情報などさまざまに教えていただいた、NPO法人中之作プロジェクトの豊田善幸さんのご紹介で、NPO代表の坂本政男さんを訪ねました。
NPO法人中之作プロジェクトは、小名浜から5kmほど北にある中之作という港町で、歴史ある町並みの保存や空き家の利活用、コミュニティづくりに取り組んでいるNPOです。
代表の坂本さんは中之作周辺の歴史に詳しく、文献資料のほか、かつて使われていた漁具や大漁旗、古写真を収集しておられます。ゆくゆくはそれらを常時公開するプランも温めておられるとお聞きしました。
今回は、坂本さんが営む釣り具店で、昔の中之作港や漁の写真を見せていただきながら、かつての賑わいや、火災や津波の被害を抑える町や家のつくり、伝統的な漁法などについて教えていただきました。
店先で大漁旗を広げていると、ご近所の方やお客さんが声をかけてくれます。ご近所のご婦人・松本さんに、ここぞとばかりに地元の料理をお聞きすると、今では作り方を知っている人も少なくなったという「秋刀魚の卯の花漬け」について教えていただきました。
お向かいのお母さん・永瀬マリ子さん(みなさんからマリちゃんと親しまれています)からは、ご主人と二人でずっと海に出てきたこと、83歳になる今も息子さんと漁に出ていることなど、お話しいただきました。
海が当たり前にそこにある暮らし、海とともにある暮らしについて様々な角度からお話をお聞きすることができました。
今回のリサーチは人から人へ。
多くの人との出会いに恵まれたリサーチとなりました。