2022年1月の記事一覧

アートワークショップ「博物館部」レポート⑬

アートワークショップ「博物館部」実施に向けてのあれやこれやを、テキストとイラストでお届けします。
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2021.11.29
「当日の流れや関わる人たちのことを、生徒さんたちに知っておいてもらうのが大切」ということは伊藤さんのレクチャーでも、中津川さんのアドバイスでも出た大切なポイントです。
それを実践すべく、今日は支援学校の生徒さんたちに博物館を紹介します。できるだけイメージしやすいように、博物館の入り口から撮った写真(撮影:那智上智さん)と地図を見せながら順路の通りに説明していきます。そして、どんな人に会うのかも動画で紹介しました。準備をたくさんしてきたので、いよいよ本番が近づいてきたという感じがします。
(テキスト・イラスト 江畑芳)

アートワークショップ「博物館部」レポート⑫

アートワークショップ「博物館部」実施に向けてのあれやこれやを、テキストとイラストでお届けします。
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2021.11.22
今回、参加していただける生徒さんたちの様子に合わせて企画を作っていったため、ワークショップをしていただく作家さんの選考も同時進行で進めました。スケジュールがなかなか合わなかったのですが、二人の作家さんに二つのワークショップを組んでいただくことで調整できました。美術家の中津川浩章さん 彫刻家の佐野美里さんです。そして撮影にはらくだスタジオの森内康博さんに入っていただきます。
中津川さんにワークショップの大枠を組み立てていただき、その枠をもとに細かい打ち合わせをしていきます。
「興味を持ったところに反応してくれる〈瞬間〉を捉えてほしい。」と、佐野さん。
「彼らがどんな〈世界〉を生きているのかを記録して、伝えられたらすごくいいよね。」と、中津川さん。
初顔合わせでぐぐぐっと森内さんの肩に乗る責任が大きくなったのでした。
(テキスト・イラスト 江畑芳)

アートワークショップ海幸山幸の道 いわきリサーチ

NPO中之作プロジェクト清航館のアンコウ吊るし切りイベントの取材を予定していた1月16日未明、いわき市沿岸部に津波警報による避難指示が出されました。
原因はトンガの火山爆発。
イベント主催者も避難され、イベントは中止かと思われました。


食のイベントで用意した食材を無駄にすることはできない。
主催者の豊田善幸さんの強い思いにより、会場をいわき市平の廿三夜尊堂に変えて実施することとなりました。
当初参加を予定されていた方の他にも、SNSで「やるよ!集まって!」という呼びかけに応じ、いわき市内の様々につながりのある人々が廿三夜尊堂に集いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


津波警報による避難指示発令は、東日本大震災の記憶を否が応でも呼び覚まします。
何とも言えないざわざわとした雰囲気の中で、アンコウが調理されていきました。
アンコウが見事に解体され、かつ全てを無駄にせず鍋の中で煮込まれていく間、
集まった人たちが、ぽつりぽつりと語り出します。
廿三夜尊堂の隣に昔、映画館があったよね。
そこで「おもひでぽろぽろ」見たな。
高校生の時、来てたね。
鍋をかきまぜながら、この場所にまつわる記憶が語られ、共有されていきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


ぽつぽつと集まった人々が、アンコウ鍋をいただき、記憶を語る。
こどもたちが、その周りで駆けまわる。


「食事」
食べることとは何でしょうか。
場の共有 経験の共有 記憶の共有。


非常時に共に食べることで、
食べることとは何か、をとても考えるリサーチとなりました。

アートワークショップ「白河まち歩きスゴロクを作ろう!」レポート③

2021年12月5日に行われたアートワークショップ「白河まち歩きスゴロクを作ろう!」。
当日参加したアーティストの藤城光さんにレポートしていただきました。
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昭和っぽい模様ガラスがかわいい、レトロな看板もいいね、などなど雑談をしながら歩いていくと、だるま隊長と書かれただるまのキャラクターが飲酒運転根絶を訴える旗が目に入った。すると語り出したのは地元の高校生。「だるま隊長」というネーミングで応募したのは彼女の知り合いなのだそうだ。彼女自身も「だるまりさん」というだるまとお巡りさんを掛け合わせた名前で応募したが落選だったのだそうだ。絶妙なネーミングで、それもいいね!としばし盛り上がる。風にはためくだるま隊長の文字がだるまりさんに変わっているのを想像し、だるまりさんだとやさしく許してくれそうだなとふと思った。


個人的な思い出話というのは、案外面白いもので、しかも個人的なものだから、市販のガイドブックにも歴史の教科書にも出てくることはないが、それが投げ込まれた途端に、その場が劇場になっていくようにも感じる時がある。今回は特に、案内人が不在なまち歩きだからこそ、徒然なるままに、発見したこと共有したり、思い出話を語ったり。そうやって自分たち自身で風景が一気に物語性を帯びる瞬間を重ねていくことで、町の中にある面白さは見る側によって開発されていくものなのだと気づいていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

民家の玄関先に置かれた鳥居、穴が空いた壁。錆びに覆われた標識。謎の祈祷所。電話番号だけの看板ミステリー。謎のミニ博物館。白菜を配る夫婦。歩く先で出会いがあり、面白いものを探し続ける。あっという間に1時間が経ち、急ぎ足でEMANONに戻ってきた参加者たちは「寒い寒い」と言いながらも皆清々しい表情だった。感想を聞くと、「いい町だなと思った。歩いていると人情味を感じた。古いものをあえて残す。そこに、町を大事にしてきた、街に対する愛着が感じられて、とてもいいなと思いました」「今までこんなに細やかに街を見たことがなかった。歩いてみると発見がたくさんあった!」「染物屋の看板でも、タオルって書いてあるのを見て、新しく作り直す場合でも、あえて古い形式を残し続けているところが、いいなあって思った」「普段はそんなにじっくりいろんなものを見ない。もっと街について知りたいと思ったし、また歩きたいと思った」「白菜を配っている老夫婦がいた!留守だろうが軒先に置いて、次々家に置いていっていたんですよ!」「白河の人情味があるコミュニティー、景色だけじゃなく、いろんな人の姿に出会えたのもよかった」「小学校以来行っていなかったお菓子屋のおばちゃんが全く変わっていなかった!」と各々が何かと出会えたという嬉しさに溢れていた。
(テキスト 藤城光)

アートワークショップ「白河まち歩きスゴロクを作ろう!」レポート②

2021年12月5日に行われたアートワークショップ「白河まち歩きスゴロクを作ろう!」。
当日参加したアーティストの藤城光さんにレポートしていただきました。
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白河の街は、東北に向かう交通の要所として発展し、松平定信が藩主だったことでも知られている。小峰城がシンボルとして聳え、街中の小径は江戸の城下町の名残りもあり、さらに昭和のレトロ感のある建物があちこちに散在し残っていることから、独特のノスタルジックな雰囲気を醸し出している。そんな小径を歩きながら、寂れた建物を「エモい」とスマホでカシャ!猫を見つけてキャッキャしながら追いかけてカシャ!散歩気分で撮影をする参加者たちの姿は自然で、スマホが普及し、写真を何の気無しに撮ること(プライベートへの配慮は当然必要だが)が日常の風景になっている現在を反映した企画であることを思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

古い昭和のビルや家が並ぶ細い道を歩いていくと「老舗通り」と書かれた小径が現れ、石畳の道のサイドには「染物屋」と看板を掲げた江戸情緒のある建物が並んでいる。看板に書いてあるメニューや建物の様子などを見て語らいながらの散歩が続き、さらに歩いていくと駅に向かう大通りの奥に小峰城が見えてくる。この道は近年になって電柱を地下に埋め、景観を整備したのだそうだ。交通の要所だったこの地域には全ての宗派の寺があるらしいと市役所職員の解説を聞きながら進むと、河原に出た。川岸に続く細い道が見え、石橋が所々に架かり、遠く山並みを背に情緒ある風景を作り出していた。繁華街近くにある石橋は「親不孝橋」と呼ばれていたのだそうだ。酔っ払って橋から落ちる人が多かったのだろうか…?そんな想像を膨らませながらそちらへと歩いていく。ここでまた河原へと歩き出した1人を見送る。バラバラに歩いているようでいて、小径を曲がるとバッタリ会って合流したり、遠くに姿が見えたり。ゲームのような感覚も楽しみながら、またね、と手を振り合う。いつもは通らない道を、もしくは知らない町を歩くというちょっとした冒険の不安の中で、知った顔に会うと不思議なもので、それぞれの道行の中でも、仲間意識が少しずつ芽生えていくものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

親不孝橋を渡り、昭和な街灯が並ぶ飲み屋街へ。ここはかつて白河の竹下通りと呼ばれていたというミニ情報に驚きの声が上がる。すっかり鄙びてしまったビル街では、埃が積もった店内の様子が垣間見えたり、看板は色褪せ、蔦が随所に絡まり、人の気配はほとんど感じられない。…と思いきや、「パブレストラン」という大きめの看板が飛び込んできて、どうやらここは人気店で、カレーが美味しく、有名マスターがいるとの情報が出てくる。ディープ白河がチラリと見えた気がした。


(テキスト 藤城光)