2022年1月の記事一覧

アートワークショップ「白河まち歩きスゴロクを作ろう!」レポート⑥

2021年12月5日に行われたアートワークショップ「白河まち歩きスゴロクを作ろう!」。
当日参加したアーティストの藤城光さんにレポートしていただきました。
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「白河」という街から受け取ったものを、写真を使って表現していく過程からは、自分の嗜好を通して地域そのものが発する語りを感じる力が、それぞれの内側から顔を出してくるのを見るようでもあった。10年後には残らないかもしれない景観や表面には見えない記憶が、歩きや写真、語りを通して個人の中に蓄積されてゆく。個々の価値のありようが可視化され、共有され、互いの視点の交換を通して多くに触れることができる仕組み。それは、その地域にある重層的かつ多様な価値の集合知のようにも見えてくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてそれは、何に価値を見出すのかの根っこは、個人個人でしかないという、基本にも立ち帰らせてくれると同時に、3枚に絞り込む瞬間、道順を作った瞬間など、個人の視野からグループへの関わりへと変化するにつれての取捨選択は、個から公へと変化していく過程のようでもあり興味深かった。


実際に体や手を動かし、自分と他者を介在させながら感覚開拓が為されていく点、また、地域を知る楽しさを体感しながらも、気がつけば主体的に地域への眼差しが変化していく点も、このまち歩きスゴロクの醍醐味だろう。例えばまちに残る懐古的なものから過去を大事にする地域性の話が出てくるように、開かれる場所と一緒に作るメンバーによっても、開拓される感覚は変わるはずだ。いろんな地域・場所・人でまち歩きスゴロクを作ってみたらどんなものが浮かび上がってくるだろうか。自分の感覚を通して地域に潜む重層性に触れ、集った異なる視座からさらに多面的に物事を捉えていく経験は、参加者はもちろんのこと、地域自体にも思いもよらないさまざまな価値を付加してゆき、人も地域もより豊かで幸せなものにしていくのではないかと、参加者の皆さんの満足そうな表情をみながら思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(テキスト 藤城光)

アートワークショップ「白河まち歩きスゴロクを作ろう!」レポート⑤

2021年12月5日に行われたアートワークショップ「白河まち歩きスゴロクを作ろう!」。
当日参加したアーティストの藤城光さんにレポートしていただきました。
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さて、全員の写真のプリントが終わり、机には空欄のスゴロクのシートが置かれ、それぞれが選んだ3枚の写真が渡される。写真は自分以外には見せては行けないルールだ。話す順番を決め、1枚ずつ、選んだ理由を話しながら、写真を置いてゆく。全部が出揃ったところで、もう一度マップで確認しながら歩くルートの道順に合わせて写真を並べ替え、スゴロクのマスに配置する。道順が決定したら糊で写真を貼り付け、写真の横にコメントを入れ、スゴロクの空欄のコマにオリジナルのゲーム性を加え、タイトルを付けたら完成だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じような体験をしているように見えて、出来上がったスゴロクは、チームによってコメントの書き方も拾い上げられた内容も、全く違っていた。スゴロクを始める前に、ぐーちーむ、ぱーちーむで交換。別のチームが見ていた世界が目の前に開かれ、また違うアプローチで作られた視点に目を丸くする参加者たち。そしてサイコロを振りながら、この日のクライマックスであるスゴロクがスタートした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お地蔵さん、お城、自動販売機、何の電話番号かもわからない電話番号。祈祷師。謎の神社&鳥居。謎のミニ博物館。変わらないお菓子屋のおばあちゃんの妖怪疑惑。謎の穴。たくさんのミステリーが展開し、あがりを競うスゴロクのゲーム性にだんだんみんな前のめりとなっていった。“振り出しに戻る”が仕込まれたスゴロクのチームでは「ここまできて〜!?」「うわ〜!!」と奇声が上がり、最初のあがりは、ゴールに進むコマからのジャンプ。「そんなあがりかたある〜?」と笑う陸奥さん。「振り出しに戻るが強烈すぎて内容思い出せない」という感想が出るほど、学生も大人も夢中になってゲームを楽しんでいた。
(テキスト 藤城光)

アートワークショップ「白河まち歩きスゴロクを作ろう!」レポート④

2021年12月5日に行われたアートワークショップ「白河まち歩きスゴロクを作ろう!」。
当日参加したアーティストの藤城光さんにレポートしていただきました。
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グループごとにテーブルを囲むように座り、まち歩きスゴロク作りで使う写真を3枚選ぶ。選んだ写真をQRコードから読み取ったメールに添付して送り、店内の壁側席で、事務局の山本さんが、どんどんプリントしてゆく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マニアックなのが多いな〜」陸奥さんは、プリントされてゆく写真を見て何やら嬉しそうだ。「大阪は早い。写真もポンポンポーンと散歩中に送られてくる。白河ではみんな戻ってきてから悩み、そこから3枚…スローだねえ」と、じっくりと悩む参加者たちをニコニコと見回してこれまた嬉しそうに呟いた。古いものがそのまま残っている白河の街は、時間の進み自体もスローなのかもしれない。その空気がその場所にいる人にも伝播するのか、EMANONに集まる人たちはゆっくり時間を楽しむ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

選び終わった参加者たちは、配られた白河のマップを囲み自分たちが歩いた場所を指差しながらお互いの旅の話をはじめた。1時間歩いたのに、ほとんどの人が意外と狭いエリアをぐるぐると回っていたことに驚く。いっぽう一人ぶらりと歩くのが好きだと話していた学生さんは、地図をはみ出して歩いていたことを知り、これまたみんなの驚きに。駅舎を撮影するのが好きという高校生は、スマホに撮りためた駅舎の写真や小峰城の写真をみんなに見せた。話しながら電車賃のことを「家賃」とつい言ってしまった高校生は、きっと住みたいくらい電車が大好きなのだろう。一人で歩きたい派、一緒にワイワイ歩きたい派など、個性が出るのも面白い。「普段は車で通っているから歩くこと自体が新鮮だった」と語った地元の高校生は、ダルライザー(白河のヒーロー)自販機、駄菓子屋など、よく知っていると思った町での新たな発見やその場所の思い出話を興奮気味に話していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(テキスト 藤城光)

アートワークショップ「博物館部」レポート⑮

アートワークショップ「博物館部」実施に向けてのあれやこれやを、テキストとイラストでお届けします。
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2021.12.3
ある教室の生徒さんに、まずは博物館に来てもらい、展示を鑑賞した前回。次のステップとして、博物館をより深く知るために、また自分だけの見方や発見を体験するために、テーマを設定しました。「博物館で動物さがし」博物館に隠れている動物を探す企画を西澤さんが考えてくださいました。今回も、博物館に行く前に教室で事前学習をします。西澤さんとサポートに入ってくださる北村美香さんとオンラインで繋いで、企画の説明をします。手作りの青色と赤色の札を各自に配り、意思表示に使ってもらいました。これはクイズに答えることもできるし、わからないことがあったときや助けてほしいときのサインにも使えます。
(テキスト・イラスト 江畑芳)

アートワークショップ「博物館部」レポート⑭

アートワークショップ「博物館部」実施に向けてのあれやこれやを、テキストとイラストでお届けします。
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2021.11.30
今日は支援学校の生徒さんたちに、彫刻家の佐野美里さんとデザイナーの大江ようさんと一緒に展示を見学してもらうワークショップです。佐野さんがやさしく声をかけながら展示室を巡ります。生徒さんは二人。それぞれの興味の持てるところを好きなように見てもらいます。目で見て理解しやすい行程表や、疲れたら休憩する場所も準備しておきました。
一人の生徒さんが疲れてしまったときは、先生がすかさず声をかけてくださり休憩場所に移動。しばらく座り込んでしまいましたが、ゆっくり時間をとると展示室に戻ってくれました。見学を終えて博物館を出るときには晴れやかな表情でした。
(テキスト・イラスト 江畑芳)

アートワークショップ「博物館部」レポート⑬

アートワークショップ「博物館部」実施に向けてのあれやこれやを、テキストとイラストでお届けします。
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2021.11.29
「当日の流れや関わる人たちのことを、生徒さんたちに知っておいてもらうのが大切」ということは伊藤さんのレクチャーでも、中津川さんのアドバイスでも出た大切なポイントです。
それを実践すべく、今日は支援学校の生徒さんたちに博物館を紹介します。できるだけイメージしやすいように、博物館の入り口から撮った写真(撮影:那智上智さん)と地図を見せながら順路の通りに説明していきます。そして、どんな人に会うのかも動画で紹介しました。準備をたくさんしてきたので、いよいよ本番が近づいてきたという感じがします。
(テキスト・イラスト 江畑芳)

アートワークショップ「博物館部」レポート⑫

アートワークショップ「博物館部」実施に向けてのあれやこれやを、テキストとイラストでお届けします。
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2021.11.22
今回、参加していただける生徒さんたちの様子に合わせて企画を作っていったため、ワークショップをしていただく作家さんの選考も同時進行で進めました。スケジュールがなかなか合わなかったのですが、二人の作家さんに二つのワークショップを組んでいただくことで調整できました。美術家の中津川浩章さん 彫刻家の佐野美里さんです。そして撮影にはらくだスタジオの森内康博さんに入っていただきます。
中津川さんにワークショップの大枠を組み立てていただき、その枠をもとに細かい打ち合わせをしていきます。
「興味を持ったところに反応してくれる〈瞬間〉を捉えてほしい。」と、佐野さん。
「彼らがどんな〈世界〉を生きているのかを記録して、伝えられたらすごくいいよね。」と、中津川さん。
初顔合わせでぐぐぐっと森内さんの肩に乗る責任が大きくなったのでした。
(テキスト・イラスト 江畑芳)

アートワークショップ海幸山幸の道 いわきリサーチ

NPO中之作プロジェクト清航館のアンコウ吊るし切りイベントの取材を予定していた1月16日未明、いわき市沿岸部に津波警報による避難指示が出されました。
原因はトンガの火山爆発。
イベント主催者も避難され、イベントは中止かと思われました。


食のイベントで用意した食材を無駄にすることはできない。
主催者の豊田善幸さんの強い思いにより、会場をいわき市平の廿三夜尊堂に変えて実施することとなりました。
当初参加を予定されていた方の他にも、SNSで「やるよ!集まって!」という呼びかけに応じ、いわき市内の様々につながりのある人々が廿三夜尊堂に集いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


津波警報による避難指示発令は、東日本大震災の記憶を否が応でも呼び覚まします。
何とも言えないざわざわとした雰囲気の中で、アンコウが調理されていきました。
アンコウが見事に解体され、かつ全てを無駄にせず鍋の中で煮込まれていく間、
集まった人たちが、ぽつりぽつりと語り出します。
廿三夜尊堂の隣に昔、映画館があったよね。
そこで「おもひでぽろぽろ」見たな。
高校生の時、来てたね。
鍋をかきまぜながら、この場所にまつわる記憶が語られ、共有されていきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


ぽつぽつと集まった人々が、アンコウ鍋をいただき、記憶を語る。
こどもたちが、その周りで駆けまわる。


「食事」
食べることとは何でしょうか。
場の共有 経験の共有 記憶の共有。


非常時に共に食べることで、
食べることとは何か、をとても考えるリサーチとなりました。

アートワークショップ「白河まち歩きスゴロクを作ろう!」レポート③

2021年12月5日に行われたアートワークショップ「白河まち歩きスゴロクを作ろう!」。
当日参加したアーティストの藤城光さんにレポートしていただきました。
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昭和っぽい模様ガラスがかわいい、レトロな看板もいいね、などなど雑談をしながら歩いていくと、だるま隊長と書かれただるまのキャラクターが飲酒運転根絶を訴える旗が目に入った。すると語り出したのは地元の高校生。「だるま隊長」というネーミングで応募したのは彼女の知り合いなのだそうだ。彼女自身も「だるまりさん」というだるまとお巡りさんを掛け合わせた名前で応募したが落選だったのだそうだ。絶妙なネーミングで、それもいいね!としばし盛り上がる。風にはためくだるま隊長の文字がだるまりさんに変わっているのを想像し、だるまりさんだとやさしく許してくれそうだなとふと思った。


個人的な思い出話というのは、案外面白いもので、しかも個人的なものだから、市販のガイドブックにも歴史の教科書にも出てくることはないが、それが投げ込まれた途端に、その場が劇場になっていくようにも感じる時がある。今回は特に、案内人が不在なまち歩きだからこそ、徒然なるままに、発見したこと共有したり、思い出話を語ったり。そうやって自分たち自身で風景が一気に物語性を帯びる瞬間を重ねていくことで、町の中にある面白さは見る側によって開発されていくものなのだと気づいていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

民家の玄関先に置かれた鳥居、穴が空いた壁。錆びに覆われた標識。謎の祈祷所。電話番号だけの看板ミステリー。謎のミニ博物館。白菜を配る夫婦。歩く先で出会いがあり、面白いものを探し続ける。あっという間に1時間が経ち、急ぎ足でEMANONに戻ってきた参加者たちは「寒い寒い」と言いながらも皆清々しい表情だった。感想を聞くと、「いい町だなと思った。歩いていると人情味を感じた。古いものをあえて残す。そこに、町を大事にしてきた、街に対する愛着が感じられて、とてもいいなと思いました」「今までこんなに細やかに街を見たことがなかった。歩いてみると発見がたくさんあった!」「染物屋の看板でも、タオルって書いてあるのを見て、新しく作り直す場合でも、あえて古い形式を残し続けているところが、いいなあって思った」「普段はそんなにじっくりいろんなものを見ない。もっと街について知りたいと思ったし、また歩きたいと思った」「白菜を配っている老夫婦がいた!留守だろうが軒先に置いて、次々家に置いていっていたんですよ!」「白河の人情味があるコミュニティー、景色だけじゃなく、いろんな人の姿に出会えたのもよかった」「小学校以来行っていなかったお菓子屋のおばちゃんが全く変わっていなかった!」と各々が何かと出会えたという嬉しさに溢れていた。
(テキスト 藤城光)

アートワークショップ「白河まち歩きスゴロクを作ろう!」レポート②

2021年12月5日に行われたアートワークショップ「白河まち歩きスゴロクを作ろう!」。
当日参加したアーティストの藤城光さんにレポートしていただきました。
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白河の街は、東北に向かう交通の要所として発展し、松平定信が藩主だったことでも知られている。小峰城がシンボルとして聳え、街中の小径は江戸の城下町の名残りもあり、さらに昭和のレトロ感のある建物があちこちに散在し残っていることから、独特のノスタルジックな雰囲気を醸し出している。そんな小径を歩きながら、寂れた建物を「エモい」とスマホでカシャ!猫を見つけてキャッキャしながら追いかけてカシャ!散歩気分で撮影をする参加者たちの姿は自然で、スマホが普及し、写真を何の気無しに撮ること(プライベートへの配慮は当然必要だが)が日常の風景になっている現在を反映した企画であることを思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

古い昭和のビルや家が並ぶ細い道を歩いていくと「老舗通り」と書かれた小径が現れ、石畳の道のサイドには「染物屋」と看板を掲げた江戸情緒のある建物が並んでいる。看板に書いてあるメニューや建物の様子などを見て語らいながらの散歩が続き、さらに歩いていくと駅に向かう大通りの奥に小峰城が見えてくる。この道は近年になって電柱を地下に埋め、景観を整備したのだそうだ。交通の要所だったこの地域には全ての宗派の寺があるらしいと市役所職員の解説を聞きながら進むと、河原に出た。川岸に続く細い道が見え、石橋が所々に架かり、遠く山並みを背に情緒ある風景を作り出していた。繁華街近くにある石橋は「親不孝橋」と呼ばれていたのだそうだ。酔っ払って橋から落ちる人が多かったのだろうか…?そんな想像を膨らませながらそちらへと歩いていく。ここでまた河原へと歩き出した1人を見送る。バラバラに歩いているようでいて、小径を曲がるとバッタリ会って合流したり、遠くに姿が見えたり。ゲームのような感覚も楽しみながら、またね、と手を振り合う。いつもは通らない道を、もしくは知らない町を歩くというちょっとした冒険の不安の中で、知った顔に会うと不思議なもので、それぞれの道行の中でも、仲間意識が少しずつ芽生えていくものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

親不孝橋を渡り、昭和な街灯が並ぶ飲み屋街へ。ここはかつて白河の竹下通りと呼ばれていたというミニ情報に驚きの声が上がる。すっかり鄙びてしまったビル街では、埃が積もった店内の様子が垣間見えたり、看板は色褪せ、蔦が随所に絡まり、人の気配はほとんど感じられない。…と思いきや、「パブレストラン」という大きめの看板が飛び込んできて、どうやらここは人気店で、カレーが美味しく、有名マスターがいるとの情報が出てくる。ディープ白河がチラリと見えた気がした。


(テキスト 藤城光)

アートワークショップ「白河まち歩きスゴロクを作ろう!」レポート①

2021年12月5日に行われたアートワークショップ「白河まち歩きスゴロクを作ろう!」。
当日参加したアーティストの藤城光さんにレポートしていただきました。
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2021年12月5日、白河、快晴。築90年の古民家を改装して作られたコミュニティ・カフェEMANON。ここが、今日のワークショップ「白河まち歩きスゴロクをつくろう!」の会場である。“高校生や大学生たちが自分たちで白河を歩いて、おもろいもんを見つけてくる。スマホで撮影して3枚写真をプリントアウトして、それらを組み合わせてまち歩きスゴロクを作る”というこの企画の発案者が本日の講師、作務衣にストールをかけハットを被ったいでたちの大阪人、陸奥賢(むつさとし)さん。ほんのりと暖まったカフェは、ワークショップの動画記録班・写真担当・白河市役所の職員たち・LMN事務局スタッフ勢で朝から賑わっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

集合時間の10時頃になると、カラカラ、と音を立ててEMANONの玄関扉が開き、参加者が少しずつ集まりはじめる。参加者は、市役所職員3名を含み、いつもEMANONを利用している高校生から、郡山から来た高校生、インターンで白河にきたという大学生など10名。ぐるりとスタッフ勢に囲まれて若干緊張した面持ちの顔が並んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その緊張をほぐすかのように、陸奥さんが柔和な口調の大阪弁で話し始める。「では2チームに分かれてもらいますので、じゃんけんで決めまひょか。ぐーぱ!」。かわいい声かけでジャンケンが始まった。途端に小学生のような表情になる参加者たち。そこからもう陸奥ワールドは始まっている。「ぐーちーむ、ぱーちーむ」とこれまた和むネーミングを陸奥さんに与えられ、子供心をヒョイっと引き出された参加者たちの顔が段々と変わっていく。「これから白河のまちを歩いてもらいます。自分が気になったもの、こんなんみつけました、いうもの、スマホで写真にとって送ってもらえれば、こちらでプリントアウトしますんで。大体1時間以内くらいで戻ってきてください」。説明の間に配布されたカードには、大きいQRコードがついている。まち歩きに必要なものはスマホのみ。参加者たちは上着を着込み、カフェの外に出た。ぐーちーむは右へ、ぱーちーむは左へと分けられ、陸奥さんに見送られながら、参加者だけでのまち歩きがスタートしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

途端に戸惑う記録班!右か?左か?誰を追いかける?大きな機材を抱えながらあっちへこっちへと走り始める動画班。そんな焦りをよそに、ぱーちーむはいったん輪を作り、自己紹介タイムに。白河の高校生、郡山から来た高校生、同じ活動をする大学生、徳島からEMANONにインターンに来た大学生、今年新人で白河市役所に入った市役所職員。記録班がキョロキョロする中で、お互いの顔と名前を確認すると、結構マイペースにそれぞれの道を歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(テキスト 藤城光)

アートワークショップ「博物館部」レポート⑪

アートワークショップ「博物館部」実施に向けてのあれやこれやを、テキストとイラストでお届けします。
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2021.11.12
今日は前回見学してもらった「令和3年度 福島県立博物館 秋の企画展 ふくしま 藁の文化~わらって、すげぇんだがら~」のふり返りを生徒さんたちにしてもらいます。展示されていたものの画像をプロジェクターで映しながら、展示の担当学芸員大里さんがお話します。展示作業の裏話をしたり、雪踏み俵や草鞋などを持ち込んで実際に触ってもらったりしました。ゆっくり見てまわった展示、少し時間をおいて思い出すと違う感じがするものです。
(テキスト・イラスト 江畑芳)

アートワークショップ「博物館部」レポート⑩

【アートワークショップ「博物館部」レポート⑩】
アートワークショップ「博物館部」実施に向けてのあれやこれやを、テキストとイラストでお届けします。
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2021.11.10
今日は事前学習で学んできた「令和3年度 福島県立博物館 秋の企画展 ふくしま 藁の文化~わらって、すげぇんだがら~」を鑑賞してもらいます。西澤真樹子さんの進行で、福島県立博物館の学芸員さんたちが対話型鑑賞に初挑戦します。学芸員さんたちは、これまでは「自分の準備した展覧会を説明」してきたのです。対話型鑑賞の秘訣は相手の発話を促すこと。こちらが話しかけるばかりでは相手の話す時間がなくなってしまいます。どんな問いかけをすると話してくれるか、展示されたものと生徒さんたちの顔を交互に見ながら頭をフル回転させていました。
(テキスト・イラスト 江畑芳)

アートワークショップ「博物館部」レポート⑨

アートワークショップ「博物館部」実施に向けてのあれやこれやを、テキストとイラストでお届けします。
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2021.11.9
支援学校の教室にお邪魔して、先生に生徒さんたちのいつもの様子を伺いました。どんなことが得意か、どんなことが苦手か。伺ったことを持ち帰り、博物館と一緒にどんなプログラムができるかを考えます。
「学校ではどうしても社会の中に馴染むために学ぶことが多いけれど、そういうことから離れた経験をできるのも今しかない。芸術や表現するという、学校教育ではなかなかできないことに触れさせてあげたい。」という先生のお気持ちを聞くことができました。
(テキスト・イラスト 江畑芳)

アートワークショップ「博物館部」レポート⑧

アートワークショップ「博物館部」実施に向けてのあれやこれやを、テキストとイラストでお届けします。
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2021.11.4
博物館をより開かれた場所にしたい博物館部。対話型鑑賞を取り入れようということで、そのコツを伊藤達矢さんにオンラインレクチャーしていただきました。聞き手は、ある教室のご担当者さんと、学芸員さんたちです。
「手には何も持っていない方が見ることに集中できます」「一人くらい展示室から飛び出しちゃう子がいても無理に連れ戻さないで、ついていけるようにスタッフの方に余裕を持たせておけるといいです」といった具体的な説明に、当日のイメージを持つことができました。
(テキスト・イラスト 江畑芳)

アートワークショップ「博物館部」レポート⑦

アートワークショップ「博物館部」実施に向けてのあれやこれやを、テキストとイラストでお届けします。
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2021.11.1
岡山リサーチ最終日は、昨日に引き続き大原美術館学芸統括・柳沢秀行さんにご案内いただき、幼稚園・保育園の園児たちが美術館で作品鑑賞などをする「未就学児童対象プログラム」を見学しました。
この前々日に訪れた生活介護事業所 「ぬかつくるとこ」のプロジェクトにも協力している柳沢さん。美術の専門家が福祉に携わったきっかけを聞いてみました。
「学生の頃、論文で福祉について書いたけど、なぜそうしたのか自分でもわからない。でも長くやってきて思うのは、わからなくていいということ。きっかけなんかなくても、誰もが”自分ごと”にしていいんだと思う。」
自分と違うひとについて考えることは“出すぎたこと”になってしまうんじゃないかと不安になり、その不安を言い訳に逃げてしまいがち。そうした心配を軽くしてくれた柳沢さんの言葉でした。
(テキスト・イラスト 江畑芳)

アートワークショップ「博物館部」レポート⑥

アートワークショップ「博物館部」実施に向けてのあれやこれやを、テキストとイラストでお届けします。
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2021.10.31
岡山リサーチ2日目は、柴川敏之さんご家族に会いにいきました。現代美術家である柴川さんと、E S D(持続可能な開発のための教育)・社会教育の研究者でもある奥様の弘子さん。お二人が携わられ、熊本県津奈木町のつなぎ美術館で開催した展覧会『ぼくのおくさん★柴川敏之展|PLANET HOME』を中心にお話していただきました。
「狐に化かされた話を真剣にしたら怪しい研究者だと思われてしまうんでしょうけど、それでもやる意義があると思ったんです。」
弘子さんの言葉です。社会教育研究者でありながら、ゲストキュレーターとして展覧会の実現に携わられました。
「普通」からはみ出すことを繰り返して、世界はやわらかさを手に入れていくのかもしれません。
午後は大原美術館新児島館(仮称)にお邪魔して、大原美術館が積極的に行ってきた教育普及活動について学芸統括・柳沢秀行さんにお話を伺いました。
(テキスト・イラスト 江畑芳)

アートワークショップ「博物館部」レポート⑤

アートワークショップ「博物館部」実施に向けてのあれやこれやを、テキストとイラストでお届けします。
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2021.10.30
どんなふうにしたら「みんなが来てくれる博物館になれるか」を探して岡山まで賢者に会いに行った博物館部。
リサーチ1日目は、生活介護事業所 「ぬかつくるとこ」の中野さんにお話を伺いました。生活のケアを柱として、アートを活用した自分らしい生活をおくることのできる福祉事業所を運営されています。
事業所に通うある方は、自分の納得がいくまで黄色いガムテープを何重にも何重にも貼り重ねていきます。ぬかのスタッフさんは、彼が納得するまでひたすらガムテープを供給します。そうしてできあがるずっしりと重みのある何かを、ときどき人が「オブジェ」と呼んだりします。
「その人のどこでスイッチが入るかわからないから、自分たちはいつでも柔らかく動けるように準備しておく。スイッチが押されるとすごくおもしろいことが起こるから、それを見極めることが求められます。」
(テキスト・イラスト 江畑芳)

アートワークショップ「博物館部」レポート④

アートワークショップ「博物館部」実施に向けてのあれやこれやを、テキストとイラストでお届けします。
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2021.10.29
この日は、ある教室の生徒さんたちに博物館に来てもらうための事前学習をしました。
旅行をする時、目的地に何があるのか調べたり、どのお店がおいしいのか比べるのは楽しいものです。博物館見学でも、事前に展示について知り、自分で調べることで興味を深めてから本番に臨むことが、当日の見学をより楽しくする秘訣なのです。
今回、博物館部では、生徒さんたちが博物館見学で見つけたものを記録できるようにスケッチブックを用意しました。これに、別に印刷しておいた博物館についての説明や見学の注意事項、今回見学してもらう福島県立博物館 秋の企画展「ふくしま 藁の文化~わらって、すげぇんだがら~」のチラシを切り貼りして自分専用の「博物館調査手帳」を作ってもらいました。(テキスト・イラスト 江畑芳)