2020年11月の記事一覧
連続オープンディスカッション「奥会津の周り方」第2回「清の眼 根っこの眼 それぞれの地域学」モニターレポート
2020年9月19日(土)、やないづ町立斎藤清美術館で開催された、
連続オープンディスカッション「奥会津の周り方」第2回「清の眼 根っこの眼 それぞれの地域学」にご参加いただいたモニター参加者のレポートを公開します。
レポート1 林あゆ美「清の眼 根っこの眼 それぞれの地域学」に参加して
地域の行事を継続していくには、時間と人付きあいの折り合いが必要です。フルタイムの会社員をしていると、時間を捻出して参加するのが難しい。村の爺様たちと付き合っていくのも、なかなかに大変です(笑)。私など何をしても叱られてばかりで、へこんだものです。それでも、知らない世界は新鮮ですし、受け継ぐことの大事さも感じます。久しぶりの村役員の今年も、関わり始めるとおもしろい事も多いです。子どもは少なくなり子ども会はなくなり、村の人たちも多くの人は積極的に行事や村作業に関わるわけではありません。けれど、まずは役員の時くらい自分にできることをしようと思っています。
幸せに生きていくことは、住んでいる地域と繋がることにもある。金子さんの話を聞いて、ますますそう思いました。(抜粋)
レポート2 岩波友紀「柳津町レポート」
題名からはあまり想像できなかった今回の柳津町のテーマは、私なりに「小さなそれぞれ視点から大きなものを見る」ことではないかなと勝手に解釈しました。個々の家の宝から見えてくるもの、自然栽培から見えるてくるもの、藁から見えてくるもの。別のものを見ていても、その先に見えてくるものは共通している感じがします。奥会津でどのようなことが大切なのか、これから大切にしていかなければいけないのか。小さな視点、例えば私の個人的な視点でも重要になるのかな、と思えるような今回のオープンディスカッションでした。(抜粋)
「地域資源の活用による地域アイデンティティの再興プログラム」活動報告1「10年間ふるさとなみえ博物館」展示作業
ライフミュージアムネットワーク2020では、今年度からの新たな取り組みとして3つのプログラム開発を行っています。
ミュージアムが持つ文化資源を活用し、ミュージアムが新たな機能を果たすモデルとなるような取り組みを
「ミュージアムのソーシャルインクルージョン」
「民具と地域とコミュニケーション」
「地域のアイデンティティと文化資源」をテーマに考えました。
「地域のアイデンティティと文化資源」をテーマとしたプログラム開発では
東日本大震災とその後の東京電力福島第一原子力発電所事故により全町避難となった浪江町の伝統工芸・大堀相馬焼を取り上げています。
大堀相馬焼の窯元や浪江町の皆さんなどにとって、大堀相馬焼、大堀相馬焼を産んだ浪江町がどのような存在なのか。
リサーチとインタビューを重ねています。
2011年に浪江町役場が二本松市に避難したことに伴い、二本松市内の廃校となった校舎を借りて浪江町立浪江小学校と津島小学校が再開。
離れて暮らさざるをえない故郷を子どもたちが学べるようにと「ふるさとなみえ科」という授業を行なってきました。
授業には、同じく二本松市内に避難していた大堀相馬焼協同組合にご協力いただいて、大堀相馬焼の製作体験も含まれていました。
時に保護者の方をお招きして一緒に作った大堀相馬焼をはじめ、浪江町の郷土料理、お祭りなどの調べ学習は、やがて子どもたちにとってもう一つの故郷となった二本松市への学習へと繋がり、子どもたちは、浪江町と二本松市の架け橋となることを自覚しながら学習を積み重ねてきました。
昨年度、浪江小学校の最後の児童が卒業し、今年度、最後の児童となった津島小学校の6年生・須藤君が先輩たちの思いを形にして残そうと博物館作りを校内で行なっています。
もちろん、大堀相馬焼も展示されます。
この日は、須藤君が命名した「10年間ふるさとなみえ博物館」の第一次展示作業。
これまでに用意した資料カードのコピーを使い、須藤君が考えていた展示室の図面をもとに一つ一つの資料への須藤君の考えを聞き、それを伝えるにはどのように展示したら良いか相談しながら作業をしました。
今後、仮展示への手直し、館長こと須藤君のあいさつパネルなどの準備も行いながら年度末の完成を目指します。
連続オープンディスカッション「奥会津の周り方」第3回「奥会津の森を活かす」
10月24日(土)、連続オープンディスカッション「奥会津の周り方」第3回「奥会津の森を活かす」を、ただみ・ブナと川のミュージアムで開催しました。
様々な立場から奥会津の森に関わるみなさまにお集まりいただき、「森とともに生きる」ことについてディスカッションを行いました。
昭和村地域おこし協力隊の押部僚太さんは昭和村の民具整理に携わっておられます。
山仕事に関わる道具のみならず、ほとんどの物が木でつくられています。材の特性を知り抜いた上で作られた道具の使い勝手のよさ、自分で山からとってきた材で自分の使う物を工夫して作る楽しさをお話しいただきました。すりこぎなど、料理に関わる道具には、健康によい材や風味をよくする材が使われていることは驚きでした。一方で先人の知恵が失われつつあること、今聞き取りをしておかなければならないこともお話しいただきました。
五十嵐健太さんは、アイパワーフォレスト株式会社に所属し、林業という立場から森に関わっておられます。身近な森を手入れし、生活の糧を持続的に得ていくあり方から、売れる・売れないという経済を優先する見方に変わり、森が放棄され荒れていく。また、気軽に植えた木が手に負えなくなったという理由で、伐採を依頼されるケースも増えているとお聞きしました。そのような中、五十嵐さんが講師をつとめる山学校では、木や森に敬意を持ちながら、安全に手入れしていく方法を森林初心者に伝える活動をします。
中野さんは只見町役場で只見のブナ林をユネスコエコパークに登録・活用する事業に携わり、森林の保全にも当たられています。只見の自然が生み出す特徴的な植生や景観、雪と深く関わった森林活用の形、人々の営みについて教えていただきました。
後半ではモデレーターとして本間宏さん(福島県文化財センター白河館参事兼学芸課長/LMN委員)にお入りいただき、会場も交えてのディスカッションを行いました。
本間さんからは、森林を守り活用していくことと文化財を守り伝えることの近しさが指摘されました。
いずれも現在の経済制度にのっていかない部分だとしても、それらは自分たちが生かされている風土をつくるもの、ただ消費していいものではなく未来の人のためのもの。
経済とは異なる価値観をもって、森とともに生きるあり方をもう一度考えたい、と参加者の方からもお声をいただきました。
経済制度との折り合い、継承者の減少など、さまざまな課題はありますが、
多様な観点から語り合う場が、一つのスタート点になればと思います。