活動報告
アートワークショップ「博物館部」レポート⑯
アートワークショップ「博物館部」実施に向けてのあれやこれやを、テキストとイラストでお届けします。
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2021.12.6
~支援学校と博物館をアーティストと行ったり来たり~
今日の会場は支援学校で生徒さんたちが日頃授業を受けている“いつもの”教室です。佐野さんと大江さんによるワークショプを行います。博物館を見学したときの映像を見てのふり返りでは、集中して見てくれている様子でした。ここから、佐野さんの進行で自分だけの「博物館box」を作ります。ベースの箱は大江さんが準備してきてくださいました。案内板の光る文字を再現したり、好きな素材を貼ったり、中に貝殻を入れて音が出るようにしたりしました。授業が終わった後、完成したものを手に取って嬉しそうに眺めてくれました。
(テキスト・イラスト 江畑芳)
ラウンドテーブル「ヤベアベ学級との12月」
ポリフォニックミュージアム、今年度のアウトプットが終了しました。
1月下旬からのアウトプットを少しずつ振り返ります。
1月末からは新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、予定していた形から変更をしながらの開催ともなりました。
そのような中、臨機応変に対応してくださった講師の皆さん、参加者の皆さんに、心より感謝申し上げます。
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ラウンドテーブル「ヤベアベ学級との12月
~支援学校と博物館をアーティストと行ったり来たりした3週間~」
(オンライン・クローズド)
日時:令和4年2月3日(木)15時30分~17時00分
参加者:佐野美里さん(彫刻家)*テキスト参加
大江ようさん(TEXT主催)
中津川浩章さん(アーティスト)
森内康博さん(映像作家)
加藤香洋さん(福島県立会津支援学校校長)
杉本雅昭さん(福島県立会津支援学校副校長)
矢部翔太郎さん、阿部美由紀さん(福島県立会津支援学校教諭)
岡部兼芳さん(はじまりの美術館長/LMN実行委員会委員)
鈴木晶(福島県立博物館長/LMN実行委員会委員長)
*レポート担当アーティスト江畑芳さん
今年度実践した4つのアートワークショップのひとつ「博物館部」は、様々な方にミュージアムを楽しんでいただけるようになるためにの取り組みです。
その一環で、12月に福島県立博物館を訪れてくれた福島県立会津支援学校高等部2年4組の3人は、博物館と支援学校を3人のアーティストと行ったり来たりしながら、博物館で過ごし、支援学校で創造を楽しんでくれました。講師として3人と一緒に過ごした佐野さん、大江さん、中津川さん。中津川さんには、博物館と支援学校を行き来するという特異な条件を活かしたワークショップの枠組みを作っていただきました。そして、行ったり来たりの3週間を記録し、そこから見える大切なことを伝える映像作品を作ってくださった森内康博さん。
関係する皆さんと、会津支援学校の加藤校長先生、杉本副校長先生、高等部2年4組の担任の矢部先生、阿部先生。そして本事業に適切なアドバイスと共に伴走してくださったLMN実行委員会委員ではじまりの美術館長の岡部さん。
皆さんにご一緒いただき、事業を振り返るラウンドテーブルをクローズドで開催しました。
スタートは、森内さん制作の映像作品の初お披露目。丁寧に大事なことを捉える視線で3週間を追いかけた森内さんは、大切な気づきをたくさんくれる映像作品を作り出してくれました。
映像に多くの糸口をもらって、ディスカッションがはじまりました。
3人が博物館で気持ちよく楽しめるように気を配り、時に心配しながら、予定調和のない3人の行動に良い意味で振り回された大人たち。
学校以外の大人と生徒たちが出会える場を大切にした支援学校の先生方の思い。外部との接続を積極的に図ろうとする学校の柔軟な解放性。
生徒が博物館の様々な要素(展示のスチールの台の穴やガラスケースのスベスベ!)を気に入り、展示品ではないモノに価値を見出す3人を新鮮な驚きとともに受け入れた博物館。
アーティストが関わることで生徒たちの創造性が引き出され、新たな表現が生まれたこと。
家でも学校でもない場所で、多くの人が障がいに出会い、知る場となれるミュージアムの可能性。
当初は、福島県立博物館に集まって行う予定だったラウンドテーブル。全員オンラインとなり、画面越しでの意見交換となりましたが、引き続き今回のような場を設けることへの応援をみなさんからいただいた、とても嬉しい時間になりました。
LMN実行委員会委員長の福島県立博物館鈴木館長をはじめ、事業を担当したLMN実行委員会事務局の川延副館長、小林、江川学芸員は、中津川さんのワークショップで3人が描いた作品を飾らせていただいた博物館のレストランから出演しました。
森内康博さんの映像作品、ラウンドテーブルの動画は、後日、福島県立博物館の公式YouTubeで公開の予定です。
公開となりましたらぜひご覧ください。
ラウンドテーブル「開く、ミュージアム」
ポリフォニックミュージアム、今年度のアウトプットが終了しました。
1月下旬からのアウトプットを少しずつ振り返ります。
1月末からは新型コロナウイルスの感染拡大の影響で
予定していた形から変更をしながらの開催ともなりました。
そのような中、臨機応変に対応してくださった講師の皆さん、
参加者の皆さんに、心より感謝申し上げます。
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ラウンドテーブル「開く、ミュージアム」
日時:1月23日(日)13:30〜16:00
講師:柳沢秀行氏(大原美術館学芸統括)
楠本智郎氏(つなぎ美術館主幹・学芸員)
岡村幸宣氏(原爆の図丸木美術館学芸員)
ディスカッションモデレーター:川延安直(福島県立博物館副館長)
会場:福島県立博物館 講堂
大原美術館の柳沢さんからは、コロナの状況下の厳しい美術館運営、その中で改めて気づいた様々な「ステークホルダー」との関わり、様々な地域資源の結節点、露出点としての美術館の存在意義について、これまで実施してこられた様々な取り組みのご紹介とともに、お話しいただきました。
つなぎ美術館の楠本さんからは、水俣病からの地域の再生と魅力的な文化的空間の創造を目的に開館したつなぎ美術館の、地域と創り上げてきた、地域の魅力を見つけるいくつかのユニークなプロジェクトについて教えていただきました。行政との連携も大事なキーワードでした。
丸木美術館の岡村さんからは、丸木位里・丸木俊夫妻が描いた「原爆の図」のための美術館という美術館の特性から、多くの方の支援により運営されてきたあり方とその現在の課題と、2011年以降東日本大震災と原発事故に向き合う場としての意味を持つようになった美術館のこれからの役割ついて、お話しいただきました。
後半行ったディスカッション「開く、ミュージアム」では、3人の方とモデレーターを務めた川延福島県立副館長がミュージアムを「開き続ける」こと、の難しさと大切さについて語り合いました。
まだまだ議論を聞きたいぐらいだったラウンドテーブル。
オンラインと来場、それぞれの方法でご参加くださった皆様、ありがとうございました。
このようなテーマで、また皆さんと考える場を作っていきたいと思います。
本ラウンドテーブルの内容は、記録集に掲載するほか、当日の録画データを福島県立博物館の公式YouTubeで公開の予定です。
もう一度改めて見たかったという方も、気になっていたけど参加できなかったという方もぜひご覧いただければと思います。
お忙しい中、ご登壇くださった3人の講師の皆さん、ご参加の皆さん、本当にありがとうございました。
議論を次に繋げたいと思います。
アートワークショップ「白河まち歩きスゴロクを作ろう!」レポート⑥
2021年12月5日に行われたアートワークショップ「白河まち歩きスゴロクを作ろう!」。
当日参加したアーティストの藤城光さんにレポートしていただきました。
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「白河」という街から受け取ったものを、写真を使って表現していく過程からは、自分の嗜好を通して地域そのものが発する語りを感じる力が、それぞれの内側から顔を出してくるのを見るようでもあった。10年後には残らないかもしれない景観や表面には見えない記憶が、歩きや写真、語りを通して個人の中に蓄積されてゆく。個々の価値のありようが可視化され、共有され、互いの視点の交換を通して多くに触れることができる仕組み。それは、その地域にある重層的かつ多様な価値の集合知のようにも見えてくる。
そしてそれは、何に価値を見出すのかの根っこは、個人個人でしかないという、基本にも立ち帰らせてくれると同時に、3枚に絞り込む瞬間、道順を作った瞬間など、個人の視野からグループへの関わりへと変化するにつれての取捨選択は、個から公へと変化していく過程のようでもあり興味深かった。
実際に体や手を動かし、自分と他者を介在させながら感覚開拓が為されていく点、また、地域を知る楽しさを体感しながらも、気がつけば主体的に地域への眼差しが変化していく点も、このまち歩きスゴロクの醍醐味だろう。例えばまちに残る懐古的なものから過去を大事にする地域性の話が出てくるように、開かれる場所と一緒に作るメンバーによっても、開拓される感覚は変わるはずだ。いろんな地域・場所・人でまち歩きスゴロクを作ってみたらどんなものが浮かび上がってくるだろうか。自分の感覚を通して地域に潜む重層性に触れ、集った異なる視座からさらに多面的に物事を捉えていく経験は、参加者はもちろんのこと、地域自体にも思いもよらないさまざまな価値を付加してゆき、人も地域もより豊かで幸せなものにしていくのではないかと、参加者の皆さんの満足そうな表情をみながら思った。
(テキスト 藤城光)
アートワークショップ「白河まち歩きスゴロクを作ろう!」レポート⑤
2021年12月5日に行われたアートワークショップ「白河まち歩きスゴロクを作ろう!」。
当日参加したアーティストの藤城光さんにレポートしていただきました。
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さて、全員の写真のプリントが終わり、机には空欄のスゴロクのシートが置かれ、それぞれが選んだ3枚の写真が渡される。写真は自分以外には見せては行けないルールだ。話す順番を決め、1枚ずつ、選んだ理由を話しながら、写真を置いてゆく。全部が出揃ったところで、もう一度マップで確認しながら歩くルートの道順に合わせて写真を並べ替え、スゴロクのマスに配置する。道順が決定したら糊で写真を貼り付け、写真の横にコメントを入れ、スゴロクの空欄のコマにオリジナルのゲーム性を加え、タイトルを付けたら完成だ。
同じような体験をしているように見えて、出来上がったスゴロクは、チームによってコメントの書き方も拾い上げられた内容も、全く違っていた。スゴロクを始める前に、ぐーちーむ、ぱーちーむで交換。別のチームが見ていた世界が目の前に開かれ、また違うアプローチで作られた視点に目を丸くする参加者たち。そしてサイコロを振りながら、この日のクライマックスであるスゴロクがスタートした。
お地蔵さん、お城、自動販売機、何の電話番号かもわからない電話番号。祈祷師。謎の神社&鳥居。謎のミニ博物館。変わらないお菓子屋のおばあちゃんの妖怪疑惑。謎の穴。たくさんのミステリーが展開し、あがりを競うスゴロクのゲーム性にだんだんみんな前のめりとなっていった。“振り出しに戻る”が仕込まれたスゴロクのチームでは「ここまできて〜!?」「うわ〜!!」と奇声が上がり、最初のあがりは、ゴールに進むコマからのジャンプ。「そんなあがりかたある〜?」と笑う陸奥さん。「振り出しに戻るが強烈すぎて内容思い出せない」という感想が出るほど、学生も大人も夢中になってゲームを楽しんでいた。
(テキスト 藤城光)