令和7年6月22日(日)開催【みんなでつくるイベント「お茶遊び」】
2025年8月26日 18時42分会津在住のライター・渡部あきこさんに、みんなでつくるイベント「お茶遊び」を取材いただきました。
6月22日(日)開催 みんなでつくるイベント「お茶遊び」
福島県立博物館では、地域に根ざした芸能や季節の行事、会津の各地で育まれた文化をテーマに、「みんなでつくるイベント」と題したさまざまな文化体験をミュージアムパートナーのみなさんと共に実施しています。
6月22日(日)に開催されたのは、「お茶遊び」。
戦国時代、千利休の弟子でもあった蒲生氏郷が会津の領主として赴任して以来、会津にも茶の湯が広まりました。鶴ヶ城本丸には茶室「麟閣」も遺っています。行ったことのある方も多いのではないでしょうか?
そんな会津にもゆかりの深いお茶文化に、もっと親しんでほしいという思いから今回のイベントが企画されました。講師は会津茶楽会主宰の宮﨑宗伊さん(裏千家)。会津木綿のお着物がよくお似合いです。
「茶道というと敷居が高いと思われるかもしれませんが、今日は作法を気にせずお茶を楽しんでみましょう。」との挨拶のあと、この日挑戦する“茶歌舞伎”について説明がなされました。
“茶歌舞伎”とは、いわゆる“利き茶ゲーム”。はじめに3種類のお茶を飲み、先に飲んだ3種に新たに1種加え、計4種のお茶をシャッフルして飲みます。
そして後に飲んだお茶について、飲んだ順番に先に飲んだどのお茶と一致するかを当てるシンプルなルール。正解者にはお茶葉などがプレゼントされるとあって目を輝かせる参加者のみなさん。
始める前に、イベントの会場となった「雪国ものづくり広場 なんだべや」内に飾られた屏風と花器について、博物館の学芸員から簡単なレクチャーがありました。
茶道では茶室に飾られた調度品を鑑賞するのも作法のひとつ。博物館に収蔵されている品をしつらえに活かす工夫は、博物館ならではです。
屏風は明治41年生まれの画家・岩浅松石(いわさしょうせき)の「会津年中行事図屏風」。会津の各地で行われていた月毎の行事をモチーフとした12枚の絵画からなる屏風です。俵引きや彼岸獅子、今でいう芋煮会の様子が生き生きと描かれ、なかなか楽しい作品です。
一方、花器に見立てているのはなんと縄文土器(のレプリカ)。土器は今でこそ文化財ですが、使われていた当時は普段使いの道具でした。お茶も同様に暮らしの中から生まれたもの。思い込みを取っ払って普段使いしてみる。作法にこだわらずお茶を楽しんでみる。どちらも本質を知る上で共通する考え方かもしれません。
レクチャーのあとは、いよいよ茶歌舞伎に挑戦。
まずは3種類。宮﨑さんが点てたお茶を一服ずつ味わっていきます。
頼るのは自分の舌と感覚のみ。真剣な表情を見せる参加者のみなさん。
次に、先に飲んだ3種に、追加で1種類を加えた4種を味わいます。1度目と点てる順番が変わった上、飲んでいないお茶も入っているというのが判断を難しくさせます。参加者にはあらかじめお茶の銘柄が書かれた紙が配られており、味わった順に「これ」と思う1枚を封筒に入れていきます。
すべてのお茶を味わったところで開封作業を行います。
封筒の中に入っている銘柄を、参加者の名前ごとに紙に書き出していきます。
結果は……。
残念ながら、今回は全問正解者はお一人のみ。
2種類を当てた方に話を聞くと、「実は一度、茶歌舞伎をしたことがあったのと、飲んだことのあるお茶が出たのがよかったのかな?」とのこと。「渋みやまろやかさの違いを意識して飲むようにしました」と経験者らしいポイントを話してくださいました。
今回、茶道の経験者も何名か参加されていましたが、口を揃えておっしゃっていたのは「普段はお茶を飲み比べることはしないので新鮮だった」という感想。お点前とは違う、お茶の楽しみ方を感じてくださったようです。
また今回は薄茶で行いましたが、正式な茶歌舞伎では濃茶だそうで、「濃茶版もぜひ経験してみたい」という感想も。茶道は初めてという方からは「日本人の遊び心を感じた」といった声も聞かれました。
茶歌舞伎の後はお菓子を食べながら、しばし歓談。
産地で異なるお茶の味わいや、かつては100種を飲み比べる茶歌舞伎があったことなど、知識豊富な宮﨑さんの話に、皆さんじっくり聞き入っていました。
最後に講師の宮﨑さんにお話を聞きました。
「博物館でのお茶のイベントは何度か開催していますが、茶歌舞伎をしてもらったのは初めて。同じお茶でも点て方で味が変わってしまうので、注意しながら点てました。楽しんでいただけたようでうれしいです。
私は、常々お茶の楽しみ方にもっと段階があればいいなと感じていて。例えばコーヒーならインスタントから豆、焙煎や淹れ方へとどんどん深掘りしていけるのですが、お茶は茶道のお稽古の次は抹茶アイスになってしまうくらい間がないんです。その間を埋めるような提案を今後もしていきたいですし、堅苦しく考えず気楽に楽しんでもらえるお茶の世界を広めていきたいですね」
今回、筆者は見学のみでしたが、はたから見ていても参加者の皆さんの緊張やワクワクが伝わってきて楽しいひとときとなりました。同時に、普段なかなか出会う機会のないプロフェッショナルな方が地元・会津で活動していると知ることができたのも発見でした。今後もイベントを通じて、宮﨑さんのような“生きた文化財”がどんどん“発掘”されてほしいと切に思いましたし、それができるのも博物館の普段の仕事があるからなんだよなと改めて感じました。
博物館では今後もミュージアムパートナーと一緒に地域の文化を身近に感じられる企画を考えていきますので、ぜひご期待ください。
「みんなでつくるイベント」はまだまだ続きます。
気になる企画があれば奮ってご参加くださいね。お待ちしています。