令和7年8月9日(日)開催【みんなでつくるイベント「こどもミニミニはくぶつかん」】
2025年9月9日 13時57分会津在住のライター・渡部あきこさんに、みんなでつくるイベント「こどもミニミニはくぶつかん」を取材いただきました。
8月9日(日)開催 みんなでつくるイベント「こどもミニミニはくぶつかん」
福島県立博物館では、ミュージアムパートナーのみなさんや、連携団体のみなさんとともに、地域に根ざした芸能や季節の行事、会津の各地で育まれた文化をテーマにした体験プログラム、こどもたちが地域の歴史や文化に遊びながら触れられるイベントなど、「みんなでつくるイベント」と題したさまざまなイベントを実施しています。
みなさんと協力しながら、博物館ならではのイベントやプログラムをつくっている様子や、参加者のみなさんの感想などをご紹介します。
8月9日(土)に開催されたのは、「こどもミニミニ博物館」。
連携団体である会津大学短期大学部の学生さんたちの協力のもと、読み聞かせやワークショップを行いました。
まずは読み聞かせの時間。担当するのは「あそびサークル」のみなさんです。保育園や幼稚園でおなじみの「はじまるよ」の手遊び歌や、手作りの仕掛けで子どもたちと交流したあと、3人の学生が代わる代わる絵本を読んでくれました。
選んだ本は、かき氷がテーマの本や、子どもが大好きなボタンをモチーフにした本、そして企画展「私たちの戦争体験-アジア・太平洋戦争終戦80年-」に合わせた戦争をテーマにしたお話までさまざま。参加した学生さんによれば、本は「メンバーで話し合って決めた」そうで、「子どもたちの興味を引くのはもちろん、夏らしいものや博物館の企画に沿うもの」という視点を持ってチョイスしたとのこと。なかでも戦争を題材にした「せかいでいちばんつよい国」は、どうしたら戦争のない世界をつくることができるのかが優しい言葉で書かれており、子どもたちはもちろん、お父さんお母さんもじっくり聞き入っていました。
読み聞かせのあとは、いよいよワークショップの開始。この日は「誰でも土器職人!オーブン陶土で皿作り」と「すてきな鉱石、さがしてえらんでペンダント!」の2つのブースが登場し、たくさんの親子連れが訪れていました。
「誰でも土器職人!オーブン陶土で皿作り」は、工作用のオーブン陶土を石膏の型に合わせて成形し、直径10㎝程度のお皿が作れるというもの。粘土をこねてよく伸ばし、好きな大きさの石膏の型を選んで形を作っていきます。形ができたら、今度は模様づけ。プラスチックのヘラで字や絵を描いてみたり、貝殻を押し付けたり、縄を巻きつけてみたり。取り組む顔は真剣そのもので、まさに職人といった言葉がぴったり。完成した皿は天日で乾かしたら持ち帰りが可能で、その後は自宅のオーブンなどを使って焼成したら完成とのこと。このブースを担当していた学生さんに話を聞きました。
「ワークショップの内容は、開催中のポイント展『遠くからやってきた弥生土器たち』にちなんで考えた企画です。一人ひとり違う作品ができあがるのは見ていて楽しいですね。子どもたちの想像力に驚かされています」
子どもたちの個性やアイデアが詰まったひと皿を見ていたら、「土器作りをしていた縄文人や弥生人もこんな風に自由な発想で創作に打ち込んでいたのかな?」と、ふと遠い時代に思いを馳せてしまいました。
一方の「すてきな鉱石、さがしてえらんでペンダント!」は小石を加工して首飾りを作るワークショップ。色もかたちもさまざまな小石の中から気に入ったものを選び、やすりで研磨し、表面を平らにしていきます。このやすりがけがなかなかの重労働で、なかにはお父さんやお母さんの手も借りながら作業を行う子どもたちの姿も。その代わり、表面がツルツルになるまで磨いていくと、角が取れ、つるんとした手触りに。何気ない石に愛着を持つ体験は、物事のなかのさまざまな可能性に気づくきっかけにもなったらいいなと、つい考えてしまいました。
磨き終えたら木のビーズを接着し、紐をとおしてペンダントのできあがり。自分の選んだ石で作ったペンダントは、子どもたちの宝物になることでしょう。
そのほか、会場内には「ゆけ!木工ロード」と題して、ななめに設置したベニヤ板に木材の端材を貼り付けて道を作り、ビー玉を転がして遊ぶコーナーや、けん玉やお手玉など昔ながらのおもちゃで自由に遊べるコーナー、絵本やパズル、積み木もあり、さまざまな年代の子どもたちで大賑わい。
博物館の収蔵品から触れる化石や土器、仏像の縮小模型など、触れる資料も展示されていました。こちらは大人も興味津々。子どもたちも親御さんたちも、資料に触ってたくさんのことを発見していたようでした。
夏休み中とあって帰省中の方や、市外から観光で訪れた方も多く、「ものづくりはなかなか家の中ではさせてあげられないので来てよかった」「たまたま見つけて参加したら想像以上に楽しかった」と話してくれたご家族もいました。また、「暑い中、涼しい場所で遊べるのがうれしい」という意見や、「またやってほしい」「次回も楽しみにしています」と早くも次の開催を熱望する声も聞かれました。
今回ワークショップを担当した会津大学短期大学部幼児教育・福祉学科葉山ゼミの葉山亮三さんに話を聞きました。
「会津では造形の遊びができる企画が少ないことから、できるだけ子どもたちに機会を作ってあげたいと、さまざまな場所でワークショップを行っています。博物館とのコラボは今年で4年目。以前はもっとゆったりしていたのですが、回を重ねるごとに参加人数が増えていてうれしい悲鳴です(笑)。
うちの学生たちは将来幼児教育に携わる仕事を志望している子が多いこともあり、今のうちにできる体験をたくさんしてほしいと思っています。それは子どもと関わることだけでなく、親御さんや地域と関わることも同様。学生にとって人の役に立つ時間を持てること、それも会津というローカルでできるというのが良い学びになると感じています。これからも続けていきたい取り組みです」
参加してくれた親子はもちろん、ワークショップや読み聞かせをしてくれた学生たちにとっても豊かな時間となったであろう今回のイベント。会場となった「雪国ものづくり広場 なんだべや」も、心なしかいつもより明るくぬくもりあふれる空間に感じられました。
学びの場の印象の強い博物館は、「うるさくしたら迷惑になるのでは」と小さいお子さん連れで足を運ぶことをためらう親御さんも多いかもしれません。ですが、こういったイベントをきっかけに気兼ねなく出かけられる場になれば、博物館をもっと身近に感じてもらうことができるはずです。そうしてきてくれた方々が、自然に地域の歴史や文化に出会い、興味を深めていけたら、博物館としての役割を果たすことにもつながるのではないでしょうか。小さい子から学生さん、大人、学芸員、地域の方と、多世代の多様な方が交流できていたことも印象的で、博物館が目指す“新しい博物館のかたち”が少しずつ出来上がっていることが感じられました。
博物館では今後もミュージアムパートナーのみなさんや、連携団体のみなさんと一緒に地域の文化を身近に感じられる「みんなでつくるイベント」を開催予定。
気になる企画があれば奮ってご参加くださいね。お待ちしています。