活動報告

アートワークショップ「博物館部」レポート番外編

アートワークショップ「博物館部」を深めるために、
10月16日(土)、オンラインラウンドテーブル「放課後博物館を考える」を開催しました。
講師は放課後等デイサービス「ホハル」の代表をつとめるアーティストの滝沢達史さん。
滝沢さんが企画された「なんでそんなんエキスポ」についてお話しいただきました。
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LMN 2021.10.16
滝沢達史さんがお話してくださったプロジェクトの一つ、「なんでそんなんエキスポ」。岡山県の港近くのホステルを会場に開催され、開催期間中に作品が展示された客室に宿泊もできたそうです。
作品の一つが、「ガムテープのタネ」。部屋にはガムテープが何重にも巻かれた鮮やかな色の物体が散らばり、一つだけ展示ケースに収まっています。室内のものには触れることができ、ベッドの上にあるものは抱きしめることもできます。足をぶつけてつまづくこともあるそうです。
そして、展示されているものは展示ケースの裏側から交換することができます。さっきまで部屋にあったものと、展示ケースに入れられて急に作品のように見えてくるもの。
「収集・保存」「お客様に来ていただく」という『受け入れる』が得意なミュージアムが、多様な価値観の下にひらかれた場所になるためのプロジェクト。それは展示ケースから飛び出して、ときに足元に転がり、ときに抱き枕になるような、そんなやわらかさを持つことなのかもしれません。
オンラインで繋いだこの日、各地のさまざまな賢者にご参加いただきました。たくさんの顔が並ぶ画面。「これから広がっていく最初の1ページ…目次みたいな日になりましたね。」と言い合って一日を終えました。
(テキスト・イラスト 江畑芳)

アートワークショップ「白河まち歩きスゴロクを作ろう!」

白河市にて「まち歩きスゴロク」ワークショップを寒風吹く中ですが快晴の日曜日に開催しました。講師は観光家でコモンズデザイナーの陸奥さんにお願いしました。
大学生、高校生らを含むみなさんからご参加いただきました。
立場や生活圏の違う人たちがまち歩きし、それぞれの目についたものを写真に収めてスゴロクに持ち寄ることで、とてもポリフォニックなスゴロクシートが完成しました。スゴロクはお手軽で身近なものです。いろいろな応用の可能性をつかめたのではないでしょうか。
詳細は追って報告します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アートワークショップ「つくること・つかうこと」奥会津リサーチ

アートワークショップ「つくること・つかうこと」は、
奥会津の只見を中心に、自然とともにあるくらしの中で、つくり、つかってきたことに学びながら、人と人とが交わり、新たなくらしを紡いでいくことをめざすワークショップです。


11月30日、12月1日、実行委員会委員の橋本誠さん(アーツセンターあきたディレクター)と奥会津をめぐり、民具を用いた場づくり・コミュニケーションづくりの可能性について、奥会津のミュージアムや収蔵施設の連携について、リサーチを行いました。


11月30日
三島町生活工芸館は、生活のなかのものづくりを大切にしています。
奥会津では冬のあいだ、山ブドウやマタタビ、ヒロロを用いた編み組のザルやカゴをつくりついできました。三島町では、電源開発の歴史への反省から、「足下の泉を掘れ」をキーワードに生活工芸運動を展開し、ものづくり文化を徹底的に見直してきました。ものづくりを継承するアカデミー生が、おじいさんたちのもとで技術の研鑽に励んでいます。
金山町自然教育村会館(旧玉梨小学校)には、栗城弥平さんが収集した「弥平民具」が収蔵されています。普段は公開しておらず、「活用」が課題になっています。
金山町では、町に残る古い写真をもとに町の歴史や文化を捉え直す「かねやま「村の肖像」プロジェクト」が行われています。また、角田勝之助さんが昭和20~30年代ころに民具の使い方などを再現撮影した写真などもあり、金山町は「写真」が特徴です。
LMNでは昨年、写真と民具を組み合わせた金山民具キットを考えました。
昭和村ではからむし工芸博物館と観光・交流施設喰丸小を訪ねました。昭和村はからむしの生産を村の産業としてきました。からむしの歴史、使われてたきた道具類などについて、からむし工芸博物館の学芸員・松尾悠亮さんにお聞きしました。
喰丸小は映画のロケにも使われた趣のある建物。建物の一部で、地域おこし協力隊の方が分類・整理を行ってきた民具を展示しています。
昭和村でも昨年、暮らしのさまざまな場面をテーマに民具キットをつくりました。
橋本さんとともに奥会津各町村でのさまざまな取り組みを振り返り、アートワークショップ「つくること・つかうこと」の展開を考えます。


12月1日
二日目は只見町へ。
実行委員会委員の中野陽介さん(只見町ブナセンター主任指導員)と合流し、只見町をご案内いただきました。
只見町の特徴は、豪雪が生んだ特徴的で豊かな自然と、その中で育まれた人のくらし・文化がユネスコエコパークに認定されていることです。
まずは、ただみ・ブナと川のミュージアムに伺い、只見の自然環境と動物、人のくらしについて、学芸員の吉岡義雄さんからご説明いただきました(ご自身の専門である昆虫について語り出すと止まらなくなる姿に、同じ学芸員としてとても共感しました)。関東のご出身の吉岡さんに、外から来た者の目で見た只見の魅力は何ですか?と質問すると、「生態系のピラミッドがしっかりと機能している。そんな貴重な生物の世界の中に、人の住むところがあること」とのこと。大切な視点だと思いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

只見では、資料館にあるような民具がごく当然に普段の生活の中で現役で使われていることに驚くと、中野さんは言います。
実際、昼食をいただいた農家民宿では、お父さんが年季の入ったマタタビのザルを使って豆の殻をむいていました。お父さんは、「昔は味噌、醤油、納豆、豆腐、なんでもつくった。つくらないと生活できないからつくった。だから豆は大切」と一粒一粒むいていました。「つくること・つかうこと」の原点があるような気がしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

また、中野さんいわく、かんじきなどの一部に化学繊維のロープが使われていることが多々あると言います。現役で使われているからこそ現在の素材でつくられている。「民具」とはこういうもの(こうあってほしい)という先入観に軽くパンチをいれる一撃です。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、来年7月オープン予定のただみ・モノとくらしのミュージアムへ。
国指定重要文化財に指定されている「会津只見の生産用具と仕事着コレクション」を収蔵し、それらを展示公開する施設として準備が進められています。体験コーナーも設ける予定とのこと。昨年リサーチさせていただいた島根県の熊谷家住宅のように、地元のこどもたちの学びの場になっていくのでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

最後は、山村の暮らし宿泊体験施設「森林の分校ふざわ」を訪ね、代表の藤沼航平さんにお話をお聞きしました。
布沢地区は只見でもかなり奥まった地域であり、人口は110人ほど。それゆえの危機感からか、何かしようという思いが強く、外部の人を積極的に受け入れる気風がある地区だといいます。山歩きや農業体験など、地区の特技を持っている人がガイドをつとめます。また、こどもたちが地区の方にヒントをもらいながら目的地にたどりつく探検ツアーも行っているとのこと。例えば、使い方のわからない民具を持って、地区の方に教えてもらいに行くツアーなど、たくさんのヒントをいただきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

民具とはなんでしょう。
資料館にあるような「民具」をイメージし、それに過剰な理想を上乗せしてしまいがちですが、民俗学的には現在使われているものも民具と言うそうです。
化学繊維が使われた民具に価値観を揺さぶられたように、民具とはもっと振れ幅のあるものなのかもしれません。そして、そこに人が関わる関わり代ももっと可能性があるのかもしれません。
そこを掘り下げていきたいと思います。

アートワークショップ「つかうこと・つくること」秋田リサーチ

11月5日~7日、LMN実行委員会委員でNPO法人アーツセンターあきたディレクターの橋本誠さんのご案内で、秋田市文化創造館をはじめとする秋田市内・近郊の取り組みをリサーチしてきました。

11月5日
まず始めにご案内いただいたのは、秋田市の旧金足小学校に展示されている油谷コレクション。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

油谷滿夫さんが収集された50万点の資料のうち約20万点、民具、暮らしの道具、商家・酒屋の道具類、小学校の教材、楽器、レコードから雑誌にいたるまで・・・が展示されています。
あまりの物量と情報量にめまいがするほどの一大コレクション。
油谷さんは個人のコレクターとして収集活動を行い、もともとは湯沢市に収集品を保管していましたが、近年秋田市に寄贈し、展示・保管と分類整理を続けておられます。
コレクションがあまりに膨大なこともあり、維持管理は難しい状況だそうですが、
秋田公立美術大学のギャラリーで開催された「アウト・オブ・民藝|秋田雪橇編 タウトと勝平」(2020年)、秋田文化創造館の「200年をたがやす」展(2021年)で紹介されたことをきっかけに、これまでとは異なる視点・手法での民具の展示に手応えも感じておられるとお聞きしました。
現在も、秋田文化創造館での「木の岐(キノマタ)」(藁などを打つ道具)の展示を準備されているとのこと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

近年UターンやIターンした若手が何やら面白い活動をしているという五城目町へ。
五城目町では、地元の酒蔵・福禄寿酒造を紹介する「333、」展が開催されていました。
福禄寿酒造は今年で創業333年を迎えます。その物語を伝える展示やトークイベントが、町内の酒屋、ギャラリー、カフェ、本屋さんなどで行われています。
会場のひとつ、ギャラリー「ものかたり」の小熊隆博さんにお話をお聞きしました。
五城目町は500年続く朝市や江戸時代創業の酒蔵など古い歴史をもつ町ですが、若手が移住し新しいことを始めてもいます。古い、新しい、どちらがよいというのではなく、どちらもそのまま共存し、強い連携があるわけでもなくそれぞれにもぞもぞ何か始めている。そんな不思議な空気感を教えていただきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

11月6日
2021年にオープンした秋田市文化創造館へ。
秋田市文化創造館の建物は、もとの秋田県立美術館。特徴的な三角屋根と丸窓が目印です。美術館が近隣に移転したことに伴い、市民の愛着がある建物を活かして、新しく文化創造館としてスタートしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

「出会い、つくり、はじめる場」をコンセプトに、誰にでもひらかれ、創造力を養う出会いの場、何かを始めようとする人を応援する場として、まちなかでやりたいことを公募・応援する「SPACE LABO」「秋田市文化創造館パートナーズ」やクリエイター・イン・レジデンス、こどもたちのやりたい!を全力で見守る「NEOびじゅつじゅんびしつ」など、数々の特徴的な事業を展開しています。
1階はあくまでフラット。ショップやカフェ、ワークショップスペース、展示スペース、ブランコ(!)などがあり、のんびりする人、会話する人、勉強する人などが思い思いに時を過ごしていました。館のスタッフがゲリラ的に珈琲店を開店したり、利用者の方がホットワインをふるまったりと、人の思いに応じて可動する空間となっているようです。

 

 

 

 

 

 

 

 

貸しギャラリー的機能もありますが、利用したい人・団体の希望に応じて、何をどこまで一緒にやるか、その場合場合に応じて対応しているとのこと。「ガイドラインを作らなければと思っているんですけど」と橋本さんはおっしゃいますが、ガイドラインがないことがこの融通無碍な雰囲気を生んでいる秘訣では?と感じました。


11月7日
秋田市文化創造館のクリエイター・イン・レジデンス事業「.oO」のワークショップ「SUNDAY DONUTS」『時間を捉えてみる』に参加しました。
「.oO」は松田朕佳さんと雨宮澪さんによる、20年後の秋田に煙の輪っかを浮かべる計画。
「20年後」という時間を捉えるため、「未来とは?」「時間は生き物?」「時間は無限?有限?」「時間に感情はある?」といった問いについて参加者が対話を重ねました。
久しぶりの抽象思考。とても刺激的な時間でした。
この事業の主体は「CHIKA, MIWO, &MORE」と名付けられていますが、その「&MORE」は私たち。参加した人々が様々に語り合い、練られた思考によって20年後の輪っかをつくります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後半は「NEOびじゅつじゅんびしつ」の発表会に同席させてもらいました。
こどもたちの「夢」を募集し、それを実現するプロジェクトです。今回の「夢」は「しぜんのものを使いサバイバル生活をしたい」と「みんなでデザインしたお皿で料理を出すレストランの店員になりたい」。
二つのチームがそれぞれに試行錯誤する様を、大人は口出しせずひたすら見守ります。時にはバスを間違えて全然違う場所に行ってしまったりしますが、それでもじっと見守る。
何かあったら大変と先回りしがちな中で、手出しをしないというのは、おとなにとってとても覚悟がいることかもしれません。こどもの「夢」を実現すると同時に、おとなの考え方を揺さぶるプロジェクトなのではないでしょうか。


誰にでもひらかれた場所。
言うは易く、行うは難しい。
それを実現しようとしている取り組みに、多くの刺激を受けた秋田リサーチでした。

アートワークショップ「博物館部」レポート②

アートワークショップ「博物館部」実施に向けてのあれやこれやを、テキストとイラストでお届けします。
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LMN 2021.10.15
プロジェクトに参加してもらう生徒さんたちについて、担当の先生にヒアリングをしました。
「博物館のプロジェクトに参加してほしい」というお願いをしたときに、「ちゃんと最後までやり切れるかなあ…」と、心配される先生もいらっしゃいます。
今日の先生たちもおっかなびっくり。
江川さんが「最初の一歩として、グループで見てもらった方が楽しんでもらえるのか、一人の方が落ち着いて見られるのか、教えていただければと思います。」
と説明すると、安心していただけました。準備は一歩づつ進められていきます。
(テキスト・イラスト 江畑芳)

アートワークショップ「博物館部」レポート①

アートワークショップ「博物館部」実施に向けてのあれやこれやを、テキストとイラストでお届けします。
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2021.9.24
多くのアート・プロジェクトは、「目的」を設定し、それに向かって年度ごとに「何をするか」を考えて組み立てていきます。ひとつひとつがオーダーメイドなのです。しかしながら、「どのように組み立てられるか」という過程は、報告書などの“後から見える形”に残りづらいものです。この部分こそ、残す必す要があるのでは?と博物館部は考えました。というわけで、博物館部の裏側もレポートしていきます。
今回、これまで福島県立博物館が積極的に関わって来られなかったひとたちにも安心して来てもらえる場になりたいと動き出しました。いろいろな違う背景を持つ人たちに博物館の方からまずは近づいてみる。どうしたら「ここにいてもいいかな」と思ってもらえるか、居場所になるってどういうことか。博物館部の手探りが始まります。
最初に参加してもらうのは支援学校の生徒さんたちです。「まずは偶然を装って陰から見守りましょう」はまるで探偵のようですが、手探りの最初の一歩なのです。(テキスト・イラスト 江畑芳)

アートワークショップ海幸山幸の道 いわきリサーチ二日目

10月27日・28日の二日間、LMN実行委員会委員の静岡大学教授・平野雅彦さん、本ワークショップの調査撮影を依頼している映像作家の飯田将茂さんと、いわき市の沿岸部・山間部を訪ねました。


10月28日(二日目)のレポートです。
久保木さんより船がぶじに海に出たとの知らせを受け、小名浜港に向かいました。
久保木さんと娘さんが待つ港に、漁を終えた昭政丸が戻ってきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

昭政丸には、久保木さんのご主人、息子さん、お孫さんが乗っており、見事な連携で船倉から魚を運び、港のトラックに積み込みます。
今日は不漁だと言いながら、どこか晴れやかな表情のみなさん。漁に出られたことが何より嬉しそうです。今日はだめでも明日はいいかもしれない、一日一日海からもらったもので生きていく。そんな明るさと喜びを感じました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とはいえ、見事なヒラメが数十尾。活魚のまま、セリが行われる沼ノ内漁港にトラックで直送します。
沼ノ内漁港では、久保木さん・娘さんに、息子さんのお嫁さんも加わり、種類や大きさごとに魚を並べていきます。かなりの重労働と思われますが、久保木家の女性たちの身のこなしは鮮やかで気持ちがいいほどでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

後継者不足により親子三代で船に乗っているのは周辺でも珍しいのだとお聞きしました。漁に出るご主人、息子さん、お孫さんだけでなく、港で働く久保木さん、娘さん、お嫁さんも含め、船はまさに家族を乗せる家なのだと思います。


次は、今回のリサーチにあたって地元の情報などさまざまに教えていただいた、NPO法人中之作プロジェクトの豊田善幸さんのご紹介で、NPO代表の坂本政男さんを訪ねました。
NPO法人中之作プロジェクトは、小名浜から5kmほど北にある中之作という港町で、歴史ある町並みの保存や空き家の利活用、コミュニティづくりに取り組んでいるNPOです。
代表の坂本さんは中之作周辺の歴史に詳しく、文献資料のほか、かつて使われていた漁具や大漁旗、古写真を収集しておられます。ゆくゆくはそれらを常時公開するプランも温めておられるとお聞きしました。
今回は、坂本さんが営む釣り具店で、昔の中之作港や漁の写真を見せていただきながら、かつての賑わいや、火災や津波の被害を抑える町や家のつくり、伝統的な漁法などについて教えていただきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

店先で大漁旗を広げていると、ご近所の方やお客さんが声をかけてくれます。ご近所のご婦人・松本さんに、ここぞとばかりに地元の料理をお聞きすると、今では作り方を知っている人も少なくなったという「秋刀魚の卯の花漬け」について教えていただきました。
お向かいのお母さん・永瀬マリ子さん(みなさんからマリちゃんと親しまれています)からは、ご主人と二人でずっと海に出てきたこと、83歳になる今も息子さんと漁に出ていることなど、お話しいただきました。
海が当たり前にそこにある暮らし、海とともにある暮らしについて様々な角度からお話をお聞きすることができました。
今回のリサーチは人から人へ。


多くの人との出会いに恵まれたリサーチとなりました。

アートワークショップ海幸山幸の道 いわきリサーチ一日目

10月27日・28日の二日間、LMN実行委員会委員の静岡大学教授・平野雅彦さん、本ワークショップの調査撮影を依頼している映像作家の飯田将茂さんと、いわき市の沿岸部・山間部を訪ねました。

 

 

 

 

 

 

 

 


10月27日
まず訪ねたのは、7月のリサーチでインタビューさせていただいた福島県漁協女性部連絡協議会会長の久保木幸子さん。
7月のインタビューでは、こどものころによく食べていたもの、得意料理、常磐ものの豊かさ・美味しさ、震災後のことなどをお聞きしました。
中でも印象的だったのが、久保木家の船・昭政丸のこと。
東日本大震災の際、久保木夫妻は船が心配になり港に向かいましたが、途中で津波に気づき避難しました。船の消息を気にかけていたところ、見ていた人が、昭政丸は誰も乗っていないのに堤防にぶつかることもなく、波を越えて沖に出ていったと教えてくれたそうです。沖で発見された昭政丸は傷んではいましたが、修理を経て、今も現役です。
更に不思議なことに、沖で発見された昭政丸の中で蛇が発見されとのこと。船を守る神さまだったのではないかと語り草になったそうです。
震災後は一日も早く漁に出たいという思いで、海の瓦礫撤去作業などにあたった。魚は食べないではいられない、とお話いただきました。
今回はぜひその昭政丸の姿を映像に収めたいと撮影に臨んだのですが、あいにくの悪天候により、調査初日は小名浜港に係留中の姿を収めるに留まりました。

確かに海はかなりの高波。
不安顔の私たちに、昭政丸が魚を揚げる沼ノ内漁港の漁港長や久保木さんのご主人は、「この様子なら、明日は大丈夫だ」と請け負ってくれました。
海で暮らしてきた経験がそう語らせるのか、明日に希望をつなぎます。

 

 

 

 

 

 

 

 

午後は、こちらも7月のリサーチでインタビューさせていただいた農家レストラン「ぷろばんす亭」へ。
いわき市三和町上三坂。同じいわき市でも海辺とは全く趣の異なる山間部で、代表の永山さんをはじめ、地域のお母さんたちが中心となって営んでいるレストランです。
残念ながら新型コロナウイルス感染症により年内は営業お休みとのことですが、お休み中も新メニューの開発や、三和ふれあい市場で販売している「かぼ茶まんじゅう」づくりに大忙し。こうして毎日集まって、話をしながらお料理をするのが楽しみなの、とお母さんたちはおっしゃいます。
今回はちょうど「かぼ茶まんじゅう」のかぼちゃ餡を作っているところにおじゃましました。

 

 

 

 

 

 

 

 

丸いかぼちゃ、長細いかぼちゃ、種類の違うかぼちゃを一緒に餡にすることで、水分が調度よくなるのだとか。
かぼちゃとお砂糖だけを入れ、大鍋で煮詰めていきます。沈み加減がいい感じ、そろそろかしら、いえもう少し、とヘラの手応えと会話をするように餡を練り上げていきます。
できたての餡をいただくと、あつあつふわふわとろ~とかぼちゃそのものの味が口に広がりました。
かぼちゃの種を買うと高いので、収穫できたかぼちゃから種をとる。それを来年蒔く。かぼちゃは自然交配なので、もはや何の種類のかぼちゃなのか分からないねとお母さんたちは明るく笑います。それはこの土地に根付いた、この土地のかぼちゃなのだろうと感じました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お母さんたちの脇で、元地域起こし協力隊の菊田さんが小豆の選別をしていました。菊田さんは上三坂の風土に魅せられてこの地に移住してこられました。上三坂で栽培している「娘きたか」という品種の小豆を、丁寧に丁寧に選り分けます。
「かぼ茶まんじゅう」は一個150円、小豆は一袋200g数百円。これを髙いという人もいるし、安いという人もいるよ、どっちなんだろうねと、永山さんはおっしゃいました。

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、明日は船が出るのか。二日目に続きます。

「10年間ふるさとなみえ博物館」巡回展 龍谷大学瀬田キャンパス

ライフミュージアムネットワーク実行委員会が協力している「10年間ふるさとなみえ博物館」巡回展。


10月25日(月)から、2番目の会場となる龍谷大学瀬田キャンパスでの展示が行われています。
展示の様子を拝見し、地域における学校やミュージアムの意味についてお話をお聞きしてきました。
巡回展を牽引してくださっている、高槻市のあくあぴあ芥川の学芸員・高田さんも駆けつけてくださいました。
展示の入り口では、嘉人館長の「博物館の使命」と「館長あいさつ」が出迎えてくれます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

展示スペースの最初には、龍谷大学の皆さんが、調べてくださった福島県や浪江町の紹介が掲示してあり、展示の趣旨を伝えるために、丁寧に準備をしてくださったことがわかります。
龍谷大学瀬田キャンパスがある滋賀県と浪江小学校・津島小学校との関わりも展示から掘り下げてくださっていました。
展示スペースの最後には、来場者から感想をいただくコーナーも。
展示をご覧になった方からは、小学校の地域学習や地域との関わりの意義や、起きたことを伝えるミュージアムという手法の意義についての感想も聞かれたようです。


博物館学を学ぶ学生さんたちが、展示準備や展示作業をし、会期中は受付をしてくださっています。
学生さんたちにとっても得るもののある展示になっているのが嬉しいことでもありました。
展示を企画し、学生さんたちを指導しながら進めてくださった横田先生、
開催告知等を学生さんと担ってくださった築地先生、
そして、関わってくださった学生さんたちに、大感謝です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「10年間ふるさとなみえ博物館」巡回展 龍谷大学瀬田キャンパス展
会期:2021年10月25日(月)〜11月6日(土)
観覧時間:10時〜17時
会場:龍谷大学瀬田キャンパスREC棟1階 展示スペース
主催:龍谷大学理工学部博物館学芸員課程
共催;「10年間ふるさとなみえ博物館」巡回展実行委員会
協力:浪江町教育委員会、ライフミュージアムネットワーク実行委員会
   龍谷大学社会学部「フクシマプロジェクト」、龍谷大学先端理工学部

「10年間ふるさとなみえ博物館」巡回展 内覧会

ライフミュージアムネットワーク実行委員会が協力している「10年間ふるさとなみえ博物館」巡回展。


10月25日(月)から、2番目の会場となる龍谷大学瀬田キャンパスでの展示がはじまりました。
開幕に先立ち、10月24日(日)報道向けの内覧会が行われ、オンラインで、元津島小学校長の木村先生と当実行委員会事務局の福島県立博物館学芸員の小林が参加しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

集まった記者さんたちからは、
「10年間ふるさとなみえ博物館」が昨年度、津島小学校に作られた経緯や、当時の様子、今回の関西での巡回展で伝えたいことなどについて質問がありました。


木村先生からは、巡回展開催にあたって津島小学校最後の児童にして、10年間ふるさとなみえ博物館初代館長の須藤嘉人さんのコメントもご紹介いただきました。
関西での巡回展開催にあたって、展示をご覧になる方に嘉人館長が伝えたいことは、嘉人館長が作成した「博物館の使命」そのものだったそうです。
「彼は、嘉人館長は、今もブレてませんでした」と嬉しそうに話してくださった木村先生の表情も印象的でした。


龍谷大学瀬田キャンパスでの展示は、11月6日(土)までです。
博物館学を学ぶ学生さんたちが、嘉人館長の思いを受け止めて仕上げた展示。
ぜひお運びください。


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「10年間ふるさとなみえ博物館」巡回展 龍谷大学瀬田キャンパス展
会期:2021年10月25日(月)〜11月6日(土)
観覧時間:10時〜17時
会場:龍谷大学瀬田キャンパスREC棟1階 展示スペース
主催:龍谷大学理工学部博物館学芸員課程
共催;「10年間ふるさとなみえ博物館」巡回展実行委員会
協力:浪江町教育委員会、ライフミュージアムネットワーク実行委員会
   龍谷大学社会学部「フクシマプロジェクト」、龍谷大学先端理工学部