活動報告

アートワークショップ海幸山幸の道 いわきリサーチ

NPO中之作プロジェクト清航館のアンコウ吊るし切りイベントの取材を予定していた1月16日未明、いわき市沿岸部に津波警報による避難指示が出されました。
原因はトンガの火山爆発。
イベント主催者も避難され、イベントは中止かと思われました。


食のイベントで用意した食材を無駄にすることはできない。
主催者の豊田善幸さんの強い思いにより、会場をいわき市平の廿三夜尊堂に変えて実施することとなりました。
当初参加を予定されていた方の他にも、SNSで「やるよ!集まって!」という呼びかけに応じ、いわき市内の様々につながりのある人々が廿三夜尊堂に集いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


津波警報による避難指示発令は、東日本大震災の記憶を否が応でも呼び覚まします。
何とも言えないざわざわとした雰囲気の中で、アンコウが調理されていきました。
アンコウが見事に解体され、かつ全てを無駄にせず鍋の中で煮込まれていく間、
集まった人たちが、ぽつりぽつりと語り出します。
廿三夜尊堂の隣に昔、映画館があったよね。
そこで「おもひでぽろぽろ」見たな。
高校生の時、来てたね。
鍋をかきまぜながら、この場所にまつわる記憶が語られ、共有されていきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


ぽつぽつと集まった人々が、アンコウ鍋をいただき、記憶を語る。
こどもたちが、その周りで駆けまわる。


「食事」
食べることとは何でしょうか。
場の共有 経験の共有 記憶の共有。


非常時に共に食べることで、
食べることとは何か、をとても考えるリサーチとなりました。

アートワークショップ「白河まち歩きスゴロクを作ろう!」レポート③

2021年12月5日に行われたアートワークショップ「白河まち歩きスゴロクを作ろう!」。
当日参加したアーティストの藤城光さんにレポートしていただきました。
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昭和っぽい模様ガラスがかわいい、レトロな看板もいいね、などなど雑談をしながら歩いていくと、だるま隊長と書かれただるまのキャラクターが飲酒運転根絶を訴える旗が目に入った。すると語り出したのは地元の高校生。「だるま隊長」というネーミングで応募したのは彼女の知り合いなのだそうだ。彼女自身も「だるまりさん」というだるまとお巡りさんを掛け合わせた名前で応募したが落選だったのだそうだ。絶妙なネーミングで、それもいいね!としばし盛り上がる。風にはためくだるま隊長の文字がだるまりさんに変わっているのを想像し、だるまりさんだとやさしく許してくれそうだなとふと思った。


個人的な思い出話というのは、案外面白いもので、しかも個人的なものだから、市販のガイドブックにも歴史の教科書にも出てくることはないが、それが投げ込まれた途端に、その場が劇場になっていくようにも感じる時がある。今回は特に、案内人が不在なまち歩きだからこそ、徒然なるままに、発見したこと共有したり、思い出話を語ったり。そうやって自分たち自身で風景が一気に物語性を帯びる瞬間を重ねていくことで、町の中にある面白さは見る側によって開発されていくものなのだと気づいていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

民家の玄関先に置かれた鳥居、穴が空いた壁。錆びに覆われた標識。謎の祈祷所。電話番号だけの看板ミステリー。謎のミニ博物館。白菜を配る夫婦。歩く先で出会いがあり、面白いものを探し続ける。あっという間に1時間が経ち、急ぎ足でEMANONに戻ってきた参加者たちは「寒い寒い」と言いながらも皆清々しい表情だった。感想を聞くと、「いい町だなと思った。歩いていると人情味を感じた。古いものをあえて残す。そこに、町を大事にしてきた、街に対する愛着が感じられて、とてもいいなと思いました」「今までこんなに細やかに街を見たことがなかった。歩いてみると発見がたくさんあった!」「染物屋の看板でも、タオルって書いてあるのを見て、新しく作り直す場合でも、あえて古い形式を残し続けているところが、いいなあって思った」「普段はそんなにじっくりいろんなものを見ない。もっと街について知りたいと思ったし、また歩きたいと思った」「白菜を配っている老夫婦がいた!留守だろうが軒先に置いて、次々家に置いていっていたんですよ!」「白河の人情味があるコミュニティー、景色だけじゃなく、いろんな人の姿に出会えたのもよかった」「小学校以来行っていなかったお菓子屋のおばちゃんが全く変わっていなかった!」と各々が何かと出会えたという嬉しさに溢れていた。
(テキスト 藤城光)

アートワークショップ「白河まち歩きスゴロクを作ろう!」レポート②

2021年12月5日に行われたアートワークショップ「白河まち歩きスゴロクを作ろう!」。
当日参加したアーティストの藤城光さんにレポートしていただきました。
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白河の街は、東北に向かう交通の要所として発展し、松平定信が藩主だったことでも知られている。小峰城がシンボルとして聳え、街中の小径は江戸の城下町の名残りもあり、さらに昭和のレトロ感のある建物があちこちに散在し残っていることから、独特のノスタルジックな雰囲気を醸し出している。そんな小径を歩きながら、寂れた建物を「エモい」とスマホでカシャ!猫を見つけてキャッキャしながら追いかけてカシャ!散歩気分で撮影をする参加者たちの姿は自然で、スマホが普及し、写真を何の気無しに撮ること(プライベートへの配慮は当然必要だが)が日常の風景になっている現在を反映した企画であることを思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

古い昭和のビルや家が並ぶ細い道を歩いていくと「老舗通り」と書かれた小径が現れ、石畳の道のサイドには「染物屋」と看板を掲げた江戸情緒のある建物が並んでいる。看板に書いてあるメニューや建物の様子などを見て語らいながらの散歩が続き、さらに歩いていくと駅に向かう大通りの奥に小峰城が見えてくる。この道は近年になって電柱を地下に埋め、景観を整備したのだそうだ。交通の要所だったこの地域には全ての宗派の寺があるらしいと市役所職員の解説を聞きながら進むと、河原に出た。川岸に続く細い道が見え、石橋が所々に架かり、遠く山並みを背に情緒ある風景を作り出していた。繁華街近くにある石橋は「親不孝橋」と呼ばれていたのだそうだ。酔っ払って橋から落ちる人が多かったのだろうか…?そんな想像を膨らませながらそちらへと歩いていく。ここでまた河原へと歩き出した1人を見送る。バラバラに歩いているようでいて、小径を曲がるとバッタリ会って合流したり、遠くに姿が見えたり。ゲームのような感覚も楽しみながら、またね、と手を振り合う。いつもは通らない道を、もしくは知らない町を歩くというちょっとした冒険の不安の中で、知った顔に会うと不思議なもので、それぞれの道行の中でも、仲間意識が少しずつ芽生えていくものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

親不孝橋を渡り、昭和な街灯が並ぶ飲み屋街へ。ここはかつて白河の竹下通りと呼ばれていたというミニ情報に驚きの声が上がる。すっかり鄙びてしまったビル街では、埃が積もった店内の様子が垣間見えたり、看板は色褪せ、蔦が随所に絡まり、人の気配はほとんど感じられない。…と思いきや、「パブレストラン」という大きめの看板が飛び込んできて、どうやらここは人気店で、カレーが美味しく、有名マスターがいるとの情報が出てくる。ディープ白河がチラリと見えた気がした。


(テキスト 藤城光)

アートワークショップ「白河まち歩きスゴロクを作ろう!」レポート①

2021年12月5日に行われたアートワークショップ「白河まち歩きスゴロクを作ろう!」。
当日参加したアーティストの藤城光さんにレポートしていただきました。
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2021年12月5日、白河、快晴。築90年の古民家を改装して作られたコミュニティ・カフェEMANON。ここが、今日のワークショップ「白河まち歩きスゴロクをつくろう!」の会場である。“高校生や大学生たちが自分たちで白河を歩いて、おもろいもんを見つけてくる。スマホで撮影して3枚写真をプリントアウトして、それらを組み合わせてまち歩きスゴロクを作る”というこの企画の発案者が本日の講師、作務衣にストールをかけハットを被ったいでたちの大阪人、陸奥賢(むつさとし)さん。ほんのりと暖まったカフェは、ワークショップの動画記録班・写真担当・白河市役所の職員たち・LMN事務局スタッフ勢で朝から賑わっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

集合時間の10時頃になると、カラカラ、と音を立ててEMANONの玄関扉が開き、参加者が少しずつ集まりはじめる。参加者は、市役所職員3名を含み、いつもEMANONを利用している高校生から、郡山から来た高校生、インターンで白河にきたという大学生など10名。ぐるりとスタッフ勢に囲まれて若干緊張した面持ちの顔が並んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その緊張をほぐすかのように、陸奥さんが柔和な口調の大阪弁で話し始める。「では2チームに分かれてもらいますので、じゃんけんで決めまひょか。ぐーぱ!」。かわいい声かけでジャンケンが始まった。途端に小学生のような表情になる参加者たち。そこからもう陸奥ワールドは始まっている。「ぐーちーむ、ぱーちーむ」とこれまた和むネーミングを陸奥さんに与えられ、子供心をヒョイっと引き出された参加者たちの顔が段々と変わっていく。「これから白河のまちを歩いてもらいます。自分が気になったもの、こんなんみつけました、いうもの、スマホで写真にとって送ってもらえれば、こちらでプリントアウトしますんで。大体1時間以内くらいで戻ってきてください」。説明の間に配布されたカードには、大きいQRコードがついている。まち歩きに必要なものはスマホのみ。参加者たちは上着を着込み、カフェの外に出た。ぐーちーむは右へ、ぱーちーむは左へと分けられ、陸奥さんに見送られながら、参加者だけでのまち歩きがスタートしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

途端に戸惑う記録班!右か?左か?誰を追いかける?大きな機材を抱えながらあっちへこっちへと走り始める動画班。そんな焦りをよそに、ぱーちーむはいったん輪を作り、自己紹介タイムに。白河の高校生、郡山から来た高校生、同じ活動をする大学生、徳島からEMANONにインターンに来た大学生、今年新人で白河市役所に入った市役所職員。記録班がキョロキョロする中で、お互いの顔と名前を確認すると、結構マイペースにそれぞれの道を歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(テキスト 藤城光)

アートワークショップ「博物館部」レポート⑪

アートワークショップ「博物館部」実施に向けてのあれやこれやを、テキストとイラストでお届けします。
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2021.11.12
今日は前回見学してもらった「令和3年度 福島県立博物館 秋の企画展 ふくしま 藁の文化~わらって、すげぇんだがら~」のふり返りを生徒さんたちにしてもらいます。展示されていたものの画像をプロジェクターで映しながら、展示の担当学芸員大里さんがお話します。展示作業の裏話をしたり、雪踏み俵や草鞋などを持ち込んで実際に触ってもらったりしました。ゆっくり見てまわった展示、少し時間をおいて思い出すと違う感じがするものです。
(テキスト・イラスト 江畑芳)