活動報告

NEW 「地域資源の活用による地域アイデンティティの再興プログラム」活動報告1「10年間ふるさとなみえ博物館」展示作業

ライフミュージアムネットワーク2020では、今年度からの新たな取り組みとして3つのプログラム開発を行っています。

ミュージアムが持つ文化資源を活用し、ミュージアムが新たな機能を果たすモデルとなるような取り組みを
「ミュージアムのソーシャルインクルージョン」
「民具と地域とコミュニケーション」
「地域のアイデンティティと文化資源」をテーマに考えました。


「地域のアイデンティティと文化資源」をテーマとしたプログラム開発では
東日本大震災とその後の東京電力福島第一原子力発電所事故により全町避難となった浪江町の伝統工芸・大堀相馬焼を取り上げています。
大堀相馬焼の窯元や浪江町の皆さんなどにとって、大堀相馬焼、大堀相馬焼を産んだ浪江町がどのような存在なのか。
リサーチとインタビューを重ねています。

 


2011年に浪江町役場が二本松市に避難したことに伴い、二本松市内の廃校となった校舎を借りて浪江町立浪江小学校と津島小学校が再開。
離れて暮らさざるをえない故郷を子どもたちが学べるようにと「ふるさとなみえ科」という授業を行なってきました。
授業には、同じく二本松市内に避難していた大堀相馬焼協同組合にご協力いただいて、大堀相馬焼の製作体験も含まれていました。
時に保護者の方をお招きして一緒に作った大堀相馬焼をはじめ、浪江町の郷土料理、お祭りなどの調べ学習は、やがて子どもたちにとってもう一つの故郷となった二本松市への学習へと繋がり、子どもたちは、浪江町と二本松市の架け橋となることを自覚しながら学習を積み重ねてきました。
昨年度、浪江小学校の最後の児童が卒業し、今年度、最後の児童となった津島小学校の6年生・須藤君が先輩たちの思いを形にして残そうと博物館作りを校内で行なっています。
もちろん、大堀相馬焼も展示されます。

この日は、須藤君が命名した「10年間ふるさとなみえ博物館」の第一次展示作業。
これまでに用意した資料カードのコピーを使い、須藤君が考えていた展示室の図面をもとに一つ一つの資料への須藤君の考えを聞き、それを伝えるにはどのように展示したら良いか相談しながら作業をしました。
今後、仮展示への手直し、館長こと須藤君のあいさつパネルなどの準備も行いながら年度末の完成を目指します。

NEW 連続オープンディスカッション「奥会津の周り方」第3回「奥会津の森を活かす」

10月24日(土)、連続オープンディスカッション「奥会津の周り方」第3回「奥会津の森を活かす」を、ただみ・ブナと川のミュージアムで開催しました。
様々な立場から奥会津の森に関わるみなさまにお集まりいただき、「森とともに生きる」ことについてディスカッションを行いました。


昭和村地域おこし協力隊の押部僚太さんは昭和村の民具整理に携わっておられます。
山仕事に関わる道具のみならず、ほとんどの物が木でつくられています。材の特性を知り抜いた上で作られた道具の使い勝手のよさ、自分で山からとってきた材で自分の使う物を工夫して作る楽しさをお話しいただきました。すりこぎなど、料理に関わる道具には、健康によい材や風味をよくする材が使われていることは驚きでした。一方で先人の知恵が失われつつあること、今聞き取りをしておかなければならないこともお話しいただきました。


五十嵐健太さんは、アイパワーフォレスト株式会社に所属し、林業という立場から森に関わっておられます。身近な森を手入れし、生活の糧を持続的に得ていくあり方から、売れる・売れないという経済を優先する見方に変わり、森が放棄され荒れていく。また、気軽に植えた木が手に負えなくなったという理由で、伐採を依頼されるケースも増えているとお聞きしました。そのような中、五十嵐さんが講師をつとめる山学校では、木や森に敬意を持ちながら、安全に手入れしていく方法を森林初心者に伝える活動をします。


中野さんは只見町役場で只見のブナ林をユネスコエコパークに登録・活用する事業に携わり、森林の保全にも当たられています。只見の自然が生み出す特徴的な植生や景観、雪と深く関わった森林活用の形、人々の営みについて教えていただきました。


後半ではモデレーターとして本間宏さん(福島県文化財センター白河館参事兼学芸課長/LMN委員)にお入りいただき、会場も交えてのディスカッションを行いました。
本間さんからは、森林を守り活用していくことと文化財を守り伝えることの近しさが指摘されました。
いずれも現在の経済制度にのっていかない部分だとしても、それらは自分たちが生かされている風土をつくるもの、ただ消費していいものではなく未来の人のためのもの。
経済とは異なる価値観をもって、森とともに生きるあり方をもう一度考えたい、と参加者の方からもお声をいただきました。
経済制度との折り合い、継承者の減少など、さまざまな課題はありますが、
多様な観点から語り合う場が、一つのスタート点になればと思います。

NEW 「多様なニーズに応えるミュージアムの利活用プログラム」活動報告3「おしえて!アクアマリンふくしまってどんなとこ?」ビデオレター作成

「多様なニーズに応えるミュージアムの利活用プログラム」の試み第3弾として、
11月4日(水)に「おしえて!アクアマリンふくしまってどんなとこ?」を行います。

会津支援学校中等部3年生のみなさんに、当日アクアマリンふくしまをお届けするため、
10月7日(水)にビデオレターを撮影してきました。

「おしえて!アクアマリンふくしまってどんなとこ?」では、
これまで行ってきたオンラインでミュージアムとつなぐ学習ではなく、アクアマリンふくしまの紹介をビデオレターでお届けします。
しかし、それだけではちょっとつまらない!工夫が必要です。
そこで、当日はジャジャーンとある人が登場したり、
凶暴と思われている生き物を触ってみたり、
生のアジをさばく!?
などなど、福島の豊かな海を、海のない会津に届けます。

お楽しみに!

 

NEW 「多様なニーズに応えるミュージアムの利活用プログラム」活動報告2「おしえて!アクアマリンいなわしろカワセミ水族館ってどんなとこ?」

「多様なニーズに応えるミュージアムの利活用プログラム」の試み第2弾として、
9月23日(水)、「おしえて!アクアマリンいなわしろカワセミ水族館ってどんなとこ?」を行いました。

会津支援学校中等部1年生は、9月30日(水)にアクアマリンいなわしろカワセミ水族館に遠足で訪れます。
その事前学習として、オンラインでカワセミ水族館を紹介するプログラムを実施しました。

初めて訪れる場所を、当日安心して楽しむことができるように、
カワセミ水族館はどんなところか、どんな生きものがいるのか、画面の向こうからカワセミ水族館の平澤桂さんに教えていただきました。

動物たちを画面に映しながら、カワウソの特徴や、外来種のブラックバス、在来種のゲンゴロウについてとてもわかりやすくお話しいただきました。

カワセミ水族館からは、事前にカワウソのメスと同じ重さのぬいぐるみとゲンゴロウの標本をお借りし、教室での体験も行いました。
カワウソの意外な重さには、みなさんとても驚いたようです。

私たちスタッフもカワセミ館手作りのグッズでカワウソ君とゲンゴロウ君になりきり、一緒に学びました。

9月30日、実際の遠足にもお邪魔しました。
カワウソ水族館に入ってすぐに、カワウソの水槽に駆け寄る生徒さんたち。餌やりが始まると「かわいい~かわいい~」の声が響きました。
次はブラックバスやゲンゴロウの水槽へ。
「これ前みたのだ!」「こっちはオオグチバス」「こっちはコグチバス」「見つけた!ゲンゴロウの小さいのだ!」「いっぱいいっぱいゲンゴロウ!」など、何度も何度も口に出して水槽をのぞく姿がありました。

 

NEW 「多様なニーズに応えるミュージアムの利活用プログラム」活動報告1「届けよう!ただみ・ブナと川のミュージアム」

ミュージアムは本来、年齢・性別・国籍・信条を異にするどなたでも利用できる文化施設です。
さまざまな人々が学びを通じて、出会い、交流する開かれた場でもあります。

しかし、一度も足を運んだことがないという方も多くいます。
その中には、心や身体の状態から来館が難しい方もおられます。また、コロナ禍の環境にある中で行きたくても行けない方々もうまれてしまいました。

そこで、このプログラムでは、福島県立会津支援学校中等部の生徒のみなさんと各ミュージアムと連携し、来館が困難な方々にミュージアムを届ける試行を行っています。

ミュージアムがみんなのものであるために何ができるのか。
ミュージアムはみんながわくわくする、元気になる場所だと知っていただくきっかけを考えていきます。

その試みの第1弾として
9月17日(木)、「届けよう!ただみ・ブナと川のミュージアム」を行いました。

会津支援学校中等部2年生のみなさんが3グループにわかれ、1校時ずつ3回に分けて参加してくれました。

会津支援学校とただみ・ブナと川のミュージアムをオンラインでつなぎ、双方向のやりとりをしながらミュージアムを紹介していきました。

ただみ・ブナと川のミュージアムからは、事前にブナの木や葉、実、ブナでつくったコウシキ、熊の毛皮をお借りして、
遠く離れたブナと川のミュージアムの指導員・太田祥作さんの説明をオンラインで聞きながら、実物を触ったり、においを嗅いだり、何に使うか想像したりしながらプログラムを実施しました。

そこには、みんなの「気になる!」「これ何ですか?」「ちょっと怖い」「触ってみたい!」がたくさんありました。

オンライン解説と実物の体験を通して、支援学校のみんなの心はただみ・ブナと川のミュージアムに行っていたのかもしれません。