金属器を模倣した石器


①石戈(双葉町後廹B遺跡)福島県教育委員会蔵 

②銅戈の復元品(参考写真)         

      写真提供:滋賀県守山市教育委員会

③石剣(南相馬市桜井遺跡)館蔵       

④石剣(双葉町後廹B遺跡)福島県教育委員会蔵

⑤有角石器(南相馬市東町場遺跡)館蔵     

 

 

 

 弥生時代、九州地方から近畿地方にかけての西日本を中心とした地域では、大陸から伝来した銅剣(どうけん)や銅戈(どうか)、鉄剣などの金属器が、戦いや祭りの道具として普及します。

 今回の展示では、これらの金属器を模倣した、あるいはこれらに系譜が求められている石器をいくつか紹介します。

 まず紹介するのは、双葉町後廹(うしろさく)B遺跡の調査で出土した資料で、銅戈を模倣した「石戈(せっか)」である可能性が指摘されている石器です。基部に穿孔があり、表面には樋(溝)が施されていることなど、石戈の特徴は認められますが、樋の形状が他の例とはやや異なっています。石材は近隣で産出する粘板岩で、時期は弥生時代中期後半と考えられています。石戈は、九州地方北部に最も多く分布し、近畿地方や長野県、新潟県でも確認されています。

 次に紹介するのは、鉄剣を模倣したと考えられる「石剣(せっけん)」という石器です。一つは南相馬市桜井遺跡で採集された資料、もう一つは前述の石戈同様、後廹B遺跡の調査で出土した資料です。桜井遺跡例は先端部の破片で、全面が丁寧に研磨されており、片面の両側辺に稜が認められます。後廹B遺跡例は先端部がやや欠損していますが、ほぼ全体がわかる資料です。区(茎(なかご)と剣身の境)に明瞭な敲打痕が認められ、表面は丁寧に研磨されています。両例とも石材は粘板岩で、時期は弥生時代中期後半と考えられています。分布の中心は西日本ですが、東北地方でも本例以外に宮城県での出土例が知られています。

 最後に紹介するのは、「有角石器(ゆうかくせっき)」や「有角石斧(ゆうかくせきふ)」と呼称されている石器で、南相馬市東町場(ひがしまちば)遺跡で採集されたものです。文字どおり一対の角をもった特異な形をした石器で、その系譜については、武器形青銅器を模倣した石戈などの武器形石製品を祖形とする、縄文時代の独鈷石(どっこいし)に源流があるとう説などが唱えられています。本例は安山岩製で、角部の一部が欠けていますが、ほぼ完形品です。採集品のため明確な所属時期はわかりませんが、同遺跡から採集されている他の資料から判断すると、弥生時代中期後半頃と想定されます。有角石器は宮城県から関東地方にかけて分布し、特に千葉県と茨城県で多くの例が知られています。

 さて、これらの石器の用途は?石戈と石剣については、それらの系譜から判断して、日常生活のなかで使用されたものではなく、祭祀の場などで用いられた特別な道具であったことが想定されます。有角石器については、使用による刃こぼれが認められる例があることから、石斧のように用いられた可能性がある一方、赤色顔料が付着した例もあることから、石戈・石剣同様、祭祀などの特別な場で用いられた可能性もあります。

 

開催概要

期 間  2021年10月9日(土)~11月28日(日)

会 場  常設展総合展示室 原始

主 催  福島県立博物館

料 金  常設展料金でご覧になれます。

     大人・大学生280円(220円)  ※( )内は20名以上の団体

     高校生・小中学生 無料

 


関連行事

ポイント展「金属器を模倣した石器」ミニ解説会 

講師 田中敏(当館学芸員)
日時 2021年11月14日(日)11:00~11:30
場所 常設展総合展示室 原始
申込方法 10月14日(木)より電話0242-28-6000または受付カウンターでお申し込みを受付けます。
定員 10名(先着順)
参加費 無料(常設展示室入場料金がかかります)
内容 展示を担当した学芸員が分かりやすく解説します。

 

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